【初めて】 ページ48
口の中から一枚の薔薇が無くなると、アリスはもう一枚、唇で花弁を咥える。
彼女の身体を幸福感が包んだ。胸の中にも温かい何かが沸き上がる。
どうしてか、幸せでいっぱいなのに、涙が滲みだす。
「(あぁ、そっか……私きっと……)」
アリスの中で、一つの答えが浮かんできた。
私きっと……今日、人生で初めて食べたんだ。本当のチョコレートを。
チョコ嫌いなんて初めから無かったんだ。
だって、こんなに美味しくて心躍るものが、チョコレートなら嫌いになんかなるはずない。
味わう度に、彼女の頭の奥底にあった”暗くて重たい何か”が一つ消えていく。
咀嚼する度に、現実から目を背くために”夢や希望”を閉じ込めた蓋から光が漏れ出す。
彼と同じ香りが鼻孔をくすぐる度に、信じられなかった”魔法”の力が身体の真ん中から沸き上がる。
眼に映る景色が変わった。
私の見ていた世界はこんなに輝いて、夢に溢れていたの？
店の中央からキャーという子供たちの楽しげな声が響いてきた。
眼を向けると、カラフルなお菓子が雨のように降り注いで、客たちは傘をさしてはしゃいでいる。
柳の木の上で、踊るように飴を降らすウォンカ。時折、綿菓子の雲をつまみ食いしていた。
微笑ましい景色。
眺めていればアリスの方にもリボン状のキャンディーが飛んできて、薔薇のチョコが展示されていた台に落ちて来る。
それを拾い上げようとした時、台に何か置いてあったことに気が付いた。
リボンではなくそちらを手に取れば、それは小さなメッセージカード。
「アリス、お誕生日イブおめでとう！！」
ガタガタの文字には見覚えがある。
だが「アリス」の文字は他の文字とは違い、慎重に、丁寧に書かれているのが伝わってきた。
「(お誕生日イブなんて言葉、初めて聞いた)」
ふふ、思わず声が出た。アリスの顔に満面の笑みが咲く。
頬をピンク色に染めて、朝露を受けた瑞々しい薔薇のような微笑み。
こうやって自然に笑えたのは何年ぶりだろう。
嗚呼、世界はこんなに簡単にひっくり返ってしまうのか。
彼女は愛おしそうに、ガタガタのメッセージを指でなぞった。
そんなアリスの姿を見て、誰かの心も高鳴った。
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ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもコメントありがとうございます！いえいえいえ、こんな素人文章にお金使わないでください……！寧ろ好きと言ってくださるかんなさんにお金払います(？)いつも応援ありがとうございます🥰 (2月5日 6時) (
レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 何かもう本当に読み進める度にこの作品が好きになります🥲💖もうお金払ってでも読みたいレベルです‼️ (2月4日 22時) (レス) @page39 id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもありがとうございます！皆さんが読んでくださる事が私の励みにもなります！🙏これからも日々の楽しみの一部になれるように、頑張って更新続けていきますのでよろしくお願いします💖 (1月28日 8時) (レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - やっぱりすごく読んでいて続きが楽しみになる作品ですね🥲私の毎日の楽しみになってます！！ (1月28日 8時) (レス) id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - kinokokanaさん» kinokokanaさんコメントありがとうございます！楽しんで下さる方がいらっしゃるのが一番励みになります😭極力、一日か二日に一度更新を目指しているので、頑張ります！💪これからもよろしくお願いします💖 (1月17日 12時) (レス) @page15 id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ソフナー | 作成日時：2024年1月7日 21時
