【もし、例えば】 ページ19
精神が削られていくだけの会食がようやくお開きになり、アリスの肩の荷が降りる。
店の外まで彼らを見送りに行けば、フィクルグルーバーが彼女の耳元へ顔を寄せた。
「私の店にも、気兼ねなく遊びに来なさい」そのお誘いに身体の奥底から抵抗感が沸き上がる。
だがその感情を表に出すことは許されず、ただニコニコしながら好意的な嘘を羅列したアリス。
早くここからいなくなれ。小さくなっていく三人分の影に祈る。
これで一難は去った。と言っても、この難は一生続いていくものなのだが。
その度に息を止めて、笑って耐え忍ばなければならない。
所詮現実なんてこんなもん。こんなもんだ。
自己暗示のように繰り返し、ただ目の前の苦しみが去った事だけに安堵の息をつく。
頭上には冬の星空。アリスの焦がれる星々は、今日も変わらず美しくそこで輝いていた。
夜風を感じたかった彼女は、少しレストランから離れ、当てもなくふらふらと歩み始める。
しんと静かな街並み。夢も魔法もチョコレートもない世界。
今すぐ全てのしがらみを捨て去る事が出来るのなら……そんな希望を持つことも許されない。
もしそんな彼女の虚ろな心を夢と希望で満たせる魔法があれば。
もしそんな魔法を使える魔術師がいたのなら。
もしそんな魔術師がチョコ職人だったなら。
もしそんなチョコ職人が彼女の前に現れてくれるなら。
具体的に言えば、彼女が昔何度も読んだ絵本の「ピーターパン」のように、煌めきの中を自由に飛び回るチョコ職人がいたなら。
「それ相応の罰を与える」と言われ自身の危機を知らぬ彼の姿を、星々を閉じ込めた彼女の瞳に映したとしたら。
宙を舞い踊る彼が、夢と魔法とチョコレートの香りを彼女の世界に振り撒いたなら。
そして、彼女の胸が人知れず高鳴ったのなら―――
ビーーー！！！
けたたましい警笛が静寂を破り、彼女を現実に呼び戻す。
聞き間違いでなければ、良く知ったシルエットの二人組が降り立った方向から聞こえてきた。
この街の警察署長はチョコレート組合に買収されている。
きっと遭遇したら良い事は起こらないはずだ。
ごちゃごちゃと考えるより先に、彼女の足はその場所目掛けて走り出していた。
胸には嫌な予感を。頭には忠告を。
手には温もりを。ポケットにはハンカチを。
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ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもコメントありがとうございます！いえいえいえ、こんな素人文章にお金使わないでください……！寧ろ好きと言ってくださるかんなさんにお金払います(？)いつも応援ありがとうございます🥰 (2月5日 6時) (
レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 何かもう本当に読み進める度にこの作品が好きになります🥲💖もうお金払ってでも読みたいレベルです‼️ (2月4日 22時) (レス) @page39 id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもありがとうございます！皆さんが読んでくださる事が私の励みにもなります！🙏これからも日々の楽しみの一部になれるように、頑張って更新続けていきますのでよろしくお願いします💖 (1月28日 8時) (レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - やっぱりすごく読んでいて続きが楽しみになる作品ですね🥲私の毎日の楽しみになってます！！ (1月28日 8時) (レス) id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - kinokokanaさん» kinokokanaさんコメントありがとうございます！楽しんで下さる方がいらっしゃるのが一番励みになります😭極力、一日か二日に一度更新を目指しているので、頑張ります！💪これからもよろしくお願いします💖 (1月17日 12時) (レス) @page15 id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ソフナー | 作成日時：2024年1月7日 21時
