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・超能力者の想い ページ10

「……う、わ…………」

 北の空に突如現れた光の帯に、Aは言葉を失う他無かった。上から紫、間に少し濃い青を挟み、水色へ。思わず目を奪われる美しい色彩だ。

「これは、カミサマが独り占めしたくなるのも納得だなあ」

「……?」

「あ、いや、神秘的って言い方あるでしょ? あれって、神様が秘密にしておきたいって思っちゃうくらい綺麗って意味なのかなって……」

「なるほど、面白い解釈だ。だとしたら、その神とやらとは気が合いそうだ。僕も、この景色をあの死神には見せたくない」

「……零夜らしい言い分だね」

 鉄壁のように重々しく、生き物のように柔軟に。オーロラはその形を変化させながら、冷たい夜空の海を悠々と泳いでいく。

「……それに、その理屈ならこの世界線でオーロラが発生しやすい理由も説明がつく」

「?」

「秘密にする必要がないんだ」

「……それって」

「ああ」

 オーロラの光が少しずつ薄まってゆく。切れかけの電球のようになってもなお威厳を失わないそれに目を向け、零夜はぽつりと零した。

「この世界線には、神の秘密を暴こうとする存在が──人間が──いないんだ」

 オーロラが、風もないのにしゃらりと揺れる。それを合図にしたかのように、夜の闇へと帰っていった。

───
──


「おいおいA、どこ行ってたんだよ? 俺様寂しかったんだぞ?」

「あはは、まあちょっと……」

「ちょっとデートに行ってきただけさ」

「お前にゃ聞いてねえよクソが」

 結局、Aと零夜が元の世界線へと帰還したのはその日の夜中だった。もうとっくに他のヒーロー達は寝ている時間だが、13は寝ずに二人の帰りを待っていたようだ。

「デートったって、お前とじゃ会話もロクに盛り上がんねーだろーし楽しくねーだろ」

「互いに信頼し合っている関係に言葉は必要ないさ。会話にしか幸福を見い出せないなんて、悲しいね」

 がるる、と唸り声が聞こえてきそうな様子で零夜に詰め寄る13の様は、その体格にも関わらず子犬のように見えた。さしずめ、零夜はそれを軽くあしらうマイペースな猫か、などとAはぼんやり思った。

「……」

 零夜の顔を見て、先程の「デート」に思いを馳せる。Aの気持ちは浮かなかった。

(あの後……、「人間がいない」って言った後、何か言いたそうだった……)

 零夜の言いたかったであろうことをああでもないこうでもないと考えてみるが、結局どれも想像の範疇を越えることはなかった。

・・・・・

????まで残り5ヶ月

合計勝負回数:116回
13勝利数:64回
零夜勝利数:52回

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作者名:パト | 作成日時:2022年9月14日 18時

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