超能力者と死神の告白 (ページ35)

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・少女の心残り未満ページ35

零夜が超能力者じゃなかったとして。13が死神じゃなかったとして。私がバグじゃなかったとして。

　何か、今よりも幸せな未来があったのかな。全てが終わる今になっても、夢想することを止められない。13の手の温もりを感じながら幾つもの世界線を通り過ぎる、その最中に思う。

　もし、何かが少しでも違っていたら。零夜が死ぬことも、私が13を巻き込んで慣れ親しんだ世界から出ていくこともなかっただろう。それ以前に、二人が勝負をすること自体、なかったかもしれない。

　……ん？勝負？

「あーっ！」

「うおっ、何だ急に」

　突然大声を出した私に驚いたのか、13がびくっと肩をすぼめた。

「結局、勝者どっちになるんだろ」

「何の話だよ」

「零夜と13の勝負だよ」

「あ？そんなの相棒を守った俺様の大勝利だろ」

「でも、零夜もちゃんと世界を守ったよ」

「……あ」

　そう。零夜も13も、お互いに最初に定めた勝利条件を達成しているのだ。

「……引き分け、になんのか。あークソ、今度改めて決着つけねーとだなこりゃ」

「今度って、そんな簡単に……」

「機会ならいくらでもあんだろ。零夜の野郎は、ここにいるんだから」

　とんとん、親指で自分の胸をつつく13は笑顔だった。つられて、私も笑う。

「……そうだね！」

　…………こんなことに巻き込まれる前、私がただの夢見がちな少女だった頃は、二人の男性に取り合われる少女漫画のヒロインに漠然と憧れたりもした。「私のために争わないで」なんてベタなセリフを、一度でいいから言ってみたいなどと、アリスちゃん達と話したりもした。

　よく考えたら、この一年間ずっとそのチャンスはあったのだから、言ってみればよかったかな。これからの人生、あんな機会はまず訪れないだろう。ちょっともったいないことしたかも。

「どこまでだって着いてこい、零夜。延長戦だ、逃げんじゃねーぞ」

　……ああ、違う。思い出した。この一年間、何回もそう言おうとしたことはあった。でもその度に、13が、零夜が、こんなに綺麗な顔で笑うから。弾んだ声で煽り合うから。温かい光の灯った瞳で睨み合うから。だからずっと言わなかったんだ。たとえ時間が巻き戻って同じような状況になったとしても、きっと私は何度だって、この言葉を飲み込むんだろう。

　だからこれは、心残りですらないのだ。

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世界滅亡まで残り∞年

合計勝負数:199回
13勝利数:100回
零夜勝利数:100回

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