・超能力者の決意 ページ31
「そしてそれは、先刻果たされた」
「……俺も、何となく感じてたよ。俺が傷ついたお前を背負った時だろ？」
「そうさ。あの瞬間をもって、僕と君の魂は確かに繋がった。計画に必要なピースは全て揃った。あとは魂を取り込んでもらうだけだ」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
淡々と語る零夜に、Aは半ば反射的に口を挟んでいた。
「魂を取り込むって……零夜は、死ぬつもりなの？」
Aの言葉には答えず、零夜は13を真っ直ぐ見据えて言った。
「だから13、君のすべきことは分かるだろう？」
「……ッ、分かんねぇよ」
「分かっているはずだ」
「分かんねぇよ！ ……なんで、お前そこまで」
「何故、か……」
13の問いかけに、零夜は少し考えた後
「伊達に、初恋してないからね」
とだけ言い、眉尻を下げて笑った。頬が僅かに上気していた。彼は純粋に照れていた。
「……本当にそれしかないの？」
Aが泣きそうな声で言った。
「そうだ！ 三人で逃げようよ！ 零夜と繋がってる "我々" が追いかけてきても、そのたびに逃げればいいじゃん！ 何も零夜が犠牲にならなくたって……」
「────だよ」
「え？」
突然、零夜がAの襟首を掴み、その体を自分の側に引き寄せた。背中からの出血で体力が奪われているはずであるのに、どこからそんな力が出たのか不思議なくらい強く、引き寄せた。そして、襟首を掴んでいるのとは逆の手をAの首にそっとあてがう。
「零夜、お前何してんだ！」
13が叫ぶ。Aの首に掛けられていた手に力が込められる。零夜に首を絞められそうになっているとようやく気がついたAが零夜、とか細い声で彼の名を呼んだ。
「──ッ」
零夜は自らの唇を噛んだ。口の端から血が流れるほど、強く。ごめん、と消え入りそうな声と共に、零夜はAの首から手を離した。手の跡が少し残ってしまったAの首を見つめる。その目は酷く悲しげで、涙をこらえるためか瞼は少し痙攣していた。
「無駄なんだよ。今ので分かっただろう？ 僕は……【僕】は【我々】じゃないと僕がいくら喚いたところで、【我々】は悲しいほどに【僕】なんだ。どう足掻いたって、僕の魂がこの体にある以上、僕は
「そんな……」
Aの苦しそうな声が途切れる。血に濡れた唇に遮られたのだ。赤い赤い、キスの味がAを満たしていた。
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作者名：パト | 作成日時：2022年9月14日 18時
