超能力者と死神の告白 (ページ29)

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叙説:超能力者の絶望ページ29

計画‪α‬(アルファ)は失敗した。

　世界樹とのチャネリングを解除した僕は、そのことを確信していた。僕だって人間だ。愛した人を手に掛けたくはない。だからそれを回避するべく考えを巡らせるのは当然のことだ。

　そこで考えたのが計画αだ。この作戦について語る前に、前提となる知識を共有しておこう。

　Aはこの世界に影響を及ぼすバグだ、という話はしたよね。だけど、彼女は世界全体から見れば恐ろしくちっぽけな存在に過ぎない。要するに、彼女が世界を揺るがすのには、それなりの時間を必要とする。

　そこで僕は考えた。世界が滅びる前に、Aを別の世界線へ移住させたらどうだろう、と。彼女が元いた世界線は彼女がいなくなったことで安寧を取り戻し、移住先の世界線はすぐに影響を受けるということもない。

　幸いにも、世界線は無限にある。世界が滅びる前兆は月の様子で分かる。世界が滅びる前に移動することを繰り返せば、世界もAも救うことができるのではないか。

　そんな計画を、僕は無謀にも世界意思に提示した。帰ってきた答えは、論外。人間が体内で生まれた癌細胞を破壊するのと同様、君の殺害は世界意思にとって決定事項だった。……【我々】にとっても。

　世界意思を無視してこの計画を実行することは、一応可能だ。けれど、僕と【我々】は一心同体。どこへ逃げようと、他でもない僕自身が優秀なレーダーとなり、【我々】に君の居場所を告げる。君を殺そうと息巻いている【我々】に。

　次に考えたのが計画β(ベータ)だ。【我々】と繋がる僕の存在が邪魔なら、Aに一人で逃げてもらえばいい。Aにチャネリングを覚えさせ、一人で世界線を移動させる。場合によってはMMMのメンバーに逃走を手伝ってもらってもいい。

　けれどこの計画は、立案の時点で頓挫した。Aの指は綺麗で、チャネリングに向いている。素質はある。けれど、駄目なのだ。チャネリングは努力でどうこうなるものじゃない。世界に選ばれた僕の力が無くては、どうしようもないのだ。

　状況は八方塞がりに思えた。愛する人間のひとりも守れない自分に嫌気がさした。それどころか、このままでは自らの手でAを殺めてしまう定めの自分に強い嫌悪感を抱いた。

　そんな時、天啓のようにふっと頭に浮かんだ計画。それが計画γだ。……そして、その計画の鍵となるのが

　──13、君なんだよ。