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・少女の告白 ページ22

「相棒……」

「……プロポーズ、いつでも受けてくれるって話。随分前のあの話、……まだ、有効かなぁ?」

 す、Aは服の裾を掴んでいた手を離し、13へと伸ばす。13が動くよりも前に、倉庫内を冷たい声が走った。

「……つまらないね」

「んだよ嫉妬か? 醜いなぁ?」

「あまり僕を見くびらないでもらえるかい? Aが僕の手を取らないことも、ありふれた答えを出して君に手を伸ばすことも、そうして二人でありふれた悲劇の結末を迎えることも、当然観測済みさ」

「おーおー気が早いなあ。せっかちな男は嫌われるぞ? まだモノガタリは終わっちゃいねえぜ? 勝手に結末まで見届けた気になるなよな」

「生憎だけれど、興味のない部分を読み飛ばして物語の結末だけ知ることができるのが、僕の能力なんでね」

「だったらその結末、俺が塗り替えてやるよ」

「一度描かれた結末は変わらないよ」

 零夜は冷たく言い切り、Aの方へ向き直る。少し申し訳なさげに揺れる瞳がAを捕らえた。

「ごめんね。君の言う覚悟も、今となっては意味を為さない。僕は君の前に選択肢がある風なことを言ったが、実際、それは物語に何ら影響を及ぼさない、──そうだな、アタリの言葉を借りるなら "分岐" の起こらない──ものでしかなかったんだ」

 そう、これは最初から決まっていたこと。Aが何を言おうと、零夜は世界の為に、13はAの為に引き下がることはない。零夜からすればこの世界は、確定した未来をなぞる読書のようなものでしかない。

「無意味じゃないよ」

「無意味じゃねーよ」

 けれど二人は迷わず言い切った。

「私はやっと、死にたくないって言える。死にたくない、殺そうとなんてすんな馬鹿って、やっと……。やっと零夜に言えるよ」

「俺もよーやく安心してAを守れる。これからはA姫様の公認騎士ってとこかね」

 だから、二人は迷わず言い切る。

「だから、私の覚悟は無意味じゃないよ」

「だから、Aの覚悟は無意味じゃねーよ」

 そんな二人に対し零夜が取ったのは、沈黙。少し長いそれにはどこか温かみがあった。いつだったか、二人でオーロラを見た時の、気まずさのないあの時間と少し似ている。Aはそんなことを思い、この状況で突然その時のことを思い出した自分を少し不思議に感じた。

 なんだ、返す言葉もねーのか? そんな軽口の弾丸を口に装填した13がそれを発砲する直前、零夜は呟くように言った。

「ああ、そうかい。なら、せいぜい頑張ってお姫様を守ることだね……!」

・超能力者の独白→←決戦当日:少女の決断



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作者名:パト | 作成日時:2022年9月14日 18時

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