十月目:死神の勝利 ページ12
「ここにきてシンプルなタイマンッスか!」
「わくわくのアゲアゲがてんこ盛りです」
本日の勝負内容は、ケルパーズの散歩道でのタイマン。今までありそうでなかった、わかりやすい直接対決に
「はわ、はわわわ……。こんなおいしい展開に立ち会えるなんて……」
特に青春アリスなどは、案の定と言うべきか、少女漫画のような展開にすっかり身も心も奪われていた。口の端から涎が垂れているのは指摘すべきだろうか。彼女の隣でモニターを眺めるAはそう考え苦笑した。
「俺はMじゃねえんだ」
「粉々に消えてくれ」
プラズマを纏い突っ込んでくる零夜に対し、13はダメカを貼って応じる。それを見た零夜は13の手前で止まり、ダメカを貫通する連撃カードを切る。13はチ、と舌打ちしつつ後退して攻撃範囲から逃れた。
「くらいやがれ!」
「バカな……」
攻撃後の硬直時間で動けない零夜にすかさずバックショット。互いに一歩も引かない一進一退の攻防に、アリスとは別の理由で食い入る者が若干数名。
「すごイ二人ともすゴい」
「……しかし、心做しか死神の動きが鈍い気がするな」
「忠臣殿もそう思ったかい? 何となく迷いを感じるというか……。それでも零夜殿と互角に渡り合えているのだからすごいものだけれどね」
そんな言葉を交わす乃保、忠臣、甘色の三人。三人とも出身地が日本(厳密には忠臣は違うのだが)なためか彼らは何かと一緒にいることが多く、Aはこっそり日本組と命名していた。
乃保、忠臣はもちろん、一見大人しく見える甘色も実は
「ああああ幸せです……! 恋の三角関係……なんて素敵……」
「13何シてるの今のチャンスだっタよ」
「ほう……あの動きは悪くないな」
「彼のデッキ……僕も使ってみてもいいかもしれないね」
右と左、恋愛脳と戦闘脳。全く属性の違う、しかし熱量は全く同じ人達にサンドイッチにされ、Aはすっかり参っていた。バトルの終了時刻が迫っていることにも気付かないほどに。
【残り十秒】
「後ろから殺るのが好きなんだァ」
アナウンスと同時、13が隠し持っていたテレパスで零夜の背後に回る。パン、と見慣れたキューブが弾けて、バトル終了の合図が鳴った。
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作者名:パト | 作成日時:2022年9月14日 18時