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ゴールに向かって走る時に迫ってくる相手の手、足音。そして、必死にフォローしようと相手の隙間を縫って走ってくる味方。
絵心さんが言ってた。己だけの武器を持て、と。
フィールドのセンターサークルを通り抜けたくらいのタイミング。相手の股下をすり抜けたボールは味方の手に渡る。そのボールを奪おうとした相手の追求から逃れようとして味方は隙を探す。
やっと探り当てた隙の先に居るのは俺だけ。相手からは死角に、見方からはギリ見える位置に。ほぼ完全なノーマーク。
えへへ、あの人の癖はもう分かった・・。
「・・フィールドの右半分、そして、左側のゴール真横、敵の死角。どれかが揃ってたら得点率は跳ね上がる」
ボールのミートだけを心掛けて最小のモーションで足を振りぬけ。最後まで軌道を読まれないように。お、俺の前に敵の壁を作りにくくするために・・。
ゴールネットの左上スレスレ。ネットを揺らしながら落ちたボールをぼんやりと眺める。俺が点を入れた。
俺の武器はシュート力じゃない。
適応能力でもない。
ぼっち故の想像力と、その実現力。そして、臆病ゆえの嗅覚。
それに俺のレンジと技術をかけ合わせれば得点は得られる。でも・・し、し、下まつげさんにはそれだと勝てない。どうしても、下まつげさんの思考を上回ることはできない。
現に下まつげさんは補完に動いていた。コントロール力皆無の俺が外した時に「自分が」点を獲れる位置に。
「嗅覚をもっと使え・・ずっと培ってきた探知能力。そして、脳内のサッカーをお花畑から戦場にグレードアップしないといけないんだ・・。ああ・・なんか嫌だ」
点は取れるのに。相手や味方の思考はある程度分かってきたのに。味方を利用してボールを誘導する、そして味方も相手も焚きつけてお互いに喰い合いをさせる。
まだ喰い合いが完璧じゃないんだ、喰い合ったところを俺が全部喰えるようにならなきゃ。・・でも、どうやって?
ああ、この感覚。まただ、下まつげさんの支配が俺の作り上げてきた喰い合いという行為さえも飲み込んで来ようとするこの感じ。
「あぁぁぁぁ・・嫌だ」
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魔孤蠧マコト(プロフ) - 『ぼっち・ざ・ろっく!』知らないけど…何となく内容わかった笑笑 終始吹きました笑 更新待ってます!頑張ってください! (4月13日 18時) (レス) @page3 id: 96bbb29a63 (このIDを非表示/違反報告)
東雲 - びびり主くん好きすぎます!そしてノア様の甥っ子という強すぎる遺伝子・・。更新無理せずに頑張ってください。待ってます・・! (9月17日 21時) (レス) id: 6caf3948ad (このIDを非表示/違反報告)
にれ(プロフ) - 太宰無音さん» 死なないでくださいね!?誰かー救急車呼んでー!!何番だっけ、110?コメありがとうございます! (8月1日 15時) (レス) id: f500b808b7 (このIDを非表示/違反報告)
にれ(プロフ) - しずさん» 神作品なんてほんとにありがとうございます!最近更新出来てませんでした、ごめんなさい! (8月1日 15時) (レス) id: f500b808b7 (このIDを非表示/違反報告)
太宰無音 - んんんんッ、。。死にそう (7月21日 19時) (レス) @page40 id: f169115c31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にれ | 作者ホームページ:https://twitter.com/mxa_1031
作成日時:2023年5月7日 11時