好きです。だから。さようなら。2【降谷零】

32’マンゴープリン ページ32

兄の端正な顔が目の前にある



何をされたかなんて気付くのは離れてから数秒後の事



『あ、え...』


今のって、キス。なの？

それに私達が本当の兄妹じゃないって



ただひたすら状況に理解出来ず呆然とする私に兄がなれ初めを語る



私の本当の親は既に他界してる事

お兄ちゃんと同じ警察官だという事

お兄ちゃんがこの話を受けて私を引き取った事

ヒロ君が幼馴染みなのは嘘だという事

お兄ちゃんがお兄ちゃんじゃない事




『...なんで』



何で、今言っちゃうの。どうして今なの




『お兄ちゃん。私、本当の兄妹じゃない事ぐらい知ってたよ』

「え...」


確かな確証がある訳でもない

だけど孤児院で私を迎えに来たこの人達が他人だと思っていたという事だけが未だにこびりついている




力なく笑う私を見てお兄ちゃんの顔が歪められる



「ごめん。好きだよ」


後頭部に手を添えて頭を引き寄せられると再び距離はゼロになる





セロリ尽くしの一日なんてふざけた事をした事


年に一回あるかないかぐらいの喧嘩でお互い口をきかなかった事


ホラー映画なんか見せられて、怖くなって一緒に寝た事


お兄ちゃんの数少ない休日に二人で台所に立った事



忘れられる訳無い

無かった事に出来る筈も無い



溢れ出る涙が少し痛くて



私もお兄ちゃんの事好きだよ


でもお兄ちゃんの好きは、私の好きとは違うんでしょ？




『...っ、私は



貴方の事が好きです。



＿＿だから。さようなら。』



溢した言葉に分かりやすく表情を曇らせた兄


兄の胸板に手をついて溢れる涙も拭わないまま見上げた






『私、アメリカに留学するの』

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