青side ページ43
もう一眠りしようかと、ふわーっと一つ欠伸をすれば体にスーッと入ってくるいい匂い。その匂いに誘われて体を起こせば、テーブルの上にラップのかかった食器とメモを発見した。
「うまっ！」
寝起きでも食べたくなるような照作のスープを温め直してありがたくいただいたものの、それを食べちゃえば、もうすることがない。
留守番って言ってもなぁ…
勝手にあれこれ漁るのも気が引けて、結局またスマホに手が伸びちゃう。
「うわぁ…」
SNSを開けば相変わらず佐久間が炎上してる。
ってか、昨日の比じゃない。
どうやら俺が寝てる間にテレビとかゴシップ記事で有名なサイトでも報道した所があったらしく、もうそれはそれは酷い言われよう…
例の動画も、凄い数拡散されちゃってて、止めようがなさそうな感じだし…
痴漢、犯罪者、クビ、脱退、解雇、アイドル失格…よくもまあこんなに酷い言葉が思いつくな、って感心すらしちゃうレベルで、不特定多数から佐久間が攻撃されてる。
「佐久間が…ねぇ…」
でも、その言葉のどれも、佐久間が浴びる必要のない言葉なんじゃないか…俺はそう思ってる。
だって、ふっかに問い詰められた時の佐久間の顔、めちゃくちゃ動揺してた。ああいうのを顔面蒼白っていうんだろうな。もし佐久間が嘘ついてたなら、あんな顔しない。あれは演技じゃなくてガチのリアクションだった。
だって、あいつ超わかりやすいし。
俺が動画見せても、ちょっとキツめの質問しても、佐久間のその様子は変わらなかった。
動画っていう決定的な証拠見せられたらさ、諦めて白状したり、バツが悪そうな顔したりするじゃん、普通。
でも、佐久間はそんな素振り全く見せなかった。
ってことで、俺的に、佐久間はシロ確。
俺に見抜けたんだから、ふっかとかとっくに分かってんだろうな…
だったら、あの場で
『やってねぇんだろ？』って、
根拠はなくても、そう伝えてやればよかった…
ほら、声に出して同じ思いだって分かればさ、自信になるじゃん。佐久間も、俺も、気持ち的に少しは楽になってたのかな、なんて。
まぁ、そんなこと今考えてもどうにもならないんだけどね。
せっせと親指が、画面をスクロールする度、
目に入るのは、何度も見たあの動画。
「じゃあ、何なんだよ、この動画…」
俺は警察でも、探偵でもないから、調べようがねぇけど、佐久間がシロだとしたら、なんでこんなもんが存在すんだよ…怪しすぎんだろ…
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作者名：舞雪 | 作成日時：2023年5月5日 0時
