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橙side ページ41

お昼2時過ぎ。
様子を見に行ったら、あべちゃんが体を起こしてた。

橙「あべちゃーん、少しでええから食べて」
緑「…」
橙「あーぷぅ…」

壁に凭れかかってぼんやりしてるあべちゃん。
起きたならばとお粥を持っていったんやけど、全然手をつけてくれへんの。さっき体を起こすん手伝ったら身体が熱かったし、しんどいんかもしれへんけど、食べな元気出んからなぁ…

黒「あべちゃん、昨日のお昼から食べてないじゃん。」
白「え、そうなの?」
黒「うん、ここに来る前、夕飯食べる余裕もなかったから」


床に置いたローテーブルでは、めめがラウに見守られながらお粥を食べてる。
この子はスプーン持って自発的に食べられてるからええ。まぁ多分めめは睡眠不足やっただけで体は元気なんやと思う。普段から健康優良児やからな。


一方あべちゃんはスプーンに掬って口元に運んでもダメ。口を真一文字に閉じて、頑なに食べようとせぇへん。昨日から食べてへんならお腹空いてるやろうに…

白「ねぇ、めめ。昨日、あべちゃんと舘さんとだったんだよね?」
黒「うん」
白「じゃあ舘さんも食べてないってことだよね…」


たしかにキッチンにあったん、お茶淹れたあとだけやったし。
まだソファーで横になってるけど、起きたらダテにも食べさせんとアカンな…

それにしても、いつもみんなの食事を気にかけてくれるダテが、料理する間もないほど、昨日は大変やったんや…
そう考えたらまた俺の知らない時間の苦しさが想像できてしんどい。


けど、俺が凹んでる場合やない。


橙「あべちゃん、一口でええから。食べな、元気でぇへんよ?」

ふっかさんたちと、さっくんと、あべちゃんたちと、ダテと…課題は山積み。

今動ける俺が、一つ一つできることやっていくしかないねんから…



緑「ッ…ぁ」
橙「ん?なに、あべちゃん?」

頑なに食べへんあべちゃんと向かい合うこと10分少々。ようやく動いたあべちゃんの口が発した声は、消えそうなほど小さかったけど…


緑「…さくまも、たべてないから…」

そこに込められた想いは、とてつもなく大きなもので…

緑「さくまと、たべたいッ…」

不意にさっくんの名前を出して、あべちゃんはポロポロと涙を零し始めてしまった。

普段、涙を滅多に流さへん阿部ちゃんのそんな姿を見て、それ以上の無理強いをする勇気は俺にはなくて…


橙「…せやなッ。ほな、さっくんを待とうな。」


むしろ、涙を誘われてることを隠すんに、俺の方が必死やった。

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作者名:舞雪 | 作成日時:2023年5月5日 0時

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