赤side ページ26
真っ直ぐに手を挙げる翔太に、みんなが目を向けた。
青「マネージャーはさ、この動画見た？」
そう言って翔太がスマホに映し出したのは、俺がここに来るまでに車内で見たのと同じもの。
佐久間らしき人が、女性に掴まれてまさに摘発された瞬間を捉えたその動画。
翔太がボリュームを上げて再生するもんだから、その物々しい音声に皆の表情が歪む。
ﾏﾈ「あぁ。すでに事務所もその動画については把握してるよ。それが佐久間なのか、断定はしていないけれど」
今の時代、誰もが気軽にカメラを向けられるからこそ生まれた映像。
緑「なに？しょうたは佐久間がやったって言いたいの？」
その映像に嫌悪感を抱くのは、ここにいるみんな同じだと思うけれど、不満をいち早く発したのは阿部だった。
青「んなこと言ってないじゃん」
緑「じゃあ、なんでその動画のこと話すんだよ！その動画出すってことは、佐久間のこと疑ってるってことじゃねぇのかよ！？」
興奮しきった阿部は立ち上がり、握った拳をわなわなと震わせ、声を荒らげながら翔太に詰め寄った。
翔太は冷静に座ったまま、顔色変えずに阿部に向かい合ってて、その状況がまずいと思ったのか、目黒が立ち上がって、阿部の肩を優しく掴んで少し翔太との距離を取らせた。
黒「あべちゃん落ち着いてよ。この動画、肝心なところは写ってないでしょ？」
目黒の言う通りだった。
この動画、最初がブレていて、悪事を働いたその瞬間は映ってない。映っているのは、その人が乗客たちによって取り押さえられてる場面だけ。だから、何の証拠にはならないはず…
ハァハァと息を荒らげながらも、ループ再生するその動画を睨みつけその場面を確認した阿部は、幾分、気持ちの高まりが収まったように見えた。
でも、ネットって残酷で。
青「んじゃさ、こっちは？」
翔太が次に流した動画は、阿部の怒りを燃え上がらせるのに充分なものだった…
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作者名：舞雪 | 作成日時：2023年5月5日 0時
