夏の朝 ページ1
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___キーンコーン、カーン、コーン
朝練終了のチャイムが、どこか遠くで鳴っている。
私はHRまでの時間を数えるように、教室の時計をひたすら見つめていた。
__ピタ
「なに、ボーっとしてンだ」
ひんやりして濡れたものが頬を刺激した。
『っ、つっ冷たぁ!!』
思わず肩が跳ねる。しかし、こんなことする人、一人しかいない。
『やめてって言ってるでしょ!!実弥ぃ!』
「ぉはよ」
右手に、水滴のしたった水筒を握る彼は、定位置である私の隣の席に着いた。
『ほんっと懲りないね!!なんなの!』
「オマエが無防備すぎンだろ。そろそろ、ちょっとは危機感持っとけ」
普通なら、その理不尽な言葉にカチンときそうだが、彼は普段からそういう奴なのだ。
『……最近コレ、ちょっと楽しんでるでしょ?』
「ンなわけねエだろ」
あからさま目線を外した彼を、嫌味に見つめる。いっこうに彼はこちらを向かないが、私はふとあることに気がついた。
『…ねえ、なんかさ、人少なくない?教室』
「……アァ、そういや他クラスに、転校生来てンだろ。確かにさっき、廊下うるさかったなァ」
『え!転校生?』
転校生__という響きに、胸が弾まない人はいないだろう。そう、彼、不死川実弥を除いて。
『じゃあ、もう居るの?あ、隣のクラスかな…』
そう訊きながら廊下に目をやると、私は慌ただしい様子の友人に、ちょうど手招きされていた。
「オマエも行くのかよ」
『…ちょっとだけ』
不服そうな実弥にはそう言い残して、私は友人のもとに急いで駆け寄っていった。
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作者名:帯 | 作成日時:2023年10月15日 13時