チェンジ 02 : ru ページ2
「…ちょっとスカート短くない？ 佐久間」
すぐ隣から呟かれた、いつもより少し低めの舘さんの声に、佐久間くんがぴくっと姿勢を正す。
「や、女の子用の衣装をリメイクしてるから、まぁ、身長の分どうしてもそうなるっていうか…その…」
「じゃあ、みんなもっと短くなるってことか」
笑顔の圧が怖い。
「全員女の子の格好なの？」
このアニメならもしかして、と思って聞くと、佐久間くんが首を横に振る。
「ううん、康二だけ男の子なんだ」
「……そう」
めめが僕の隣で安心したような、残念そうな顔してる。
康二くん、顔ちっちゃくてお人形さんみたいな頭身だから、きっとアニメの女の子の服も似合うだろうけどね。
『ふわり広がる優しい光…キュアプリズム』
ふわふわ可愛らしい声で次のセリフが聞こえてきたら、ぴくっとアンテナが立った感じの佐久間くんがモニターに視線を移す。
ピンクのウィッグに縁取られて、緑のカラコンを入れた瞳と優しく笑んだ目元が映る。
しょっぴーと同じように画角が引いていって、顔の横できゅるんって、『JUICY』の手の振りみたいなポーズ。
ちょっとだけ唇を開いたあざとい表情。
わぁ、これはもしや。
「阿部ちゃん？」
「阿部か」
「阿部だね」
「阿部ちゃんだ…」
「せいかーい！」
佐久間くん以外も満場一致で阿部ちゃんって分かりました。
最後に糖度120%の笑顔を残すのも、阿部ちゃん以外の何者でもない。
ふわふわの白いスカート履いて、柔らかそうなふんわりピンクの髪と腰の長いリボンがひらひら靡いて、阿部ちゃんの華奢な感じが引き立つ。
「阿部、骨格ウェーブだから、こういうの似合うのかも」
「でしょー？
でも見た目だけじゃなくって、優しくてほわほわしてるのに、最終的に１番心が強そうなところも阿部ちゃんなんだよねぇ。
……でもさぁ、」
岩本くん相手に楽しそうにキャラ解説してた佐久間くんの目が急に曇る。
「予習しすぎなんだよね……あんなめろめろに可愛いの想定外なんだけど」
光のない黒目が阿部ちゃんの危険を知らせてる気がする。
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作者名：すず | 作成日時：2024年2月4日 5時
