雪男の紫さん (ページ6)

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鍵ぐらいさっさと返せばいいのに中々

返してくれない深澤。

私も馬鹿じゃないし深澤から奪い取ろうとしたら

流される事なんてわかってるからしない。

「今から私が帰って来るまでにここから出て行って？
鍵はポストでいいから。もし、戻ってきた時にまだいたら警察呼ぶから。じゃあ、さようなっ…………」

さようならを言い終わる前に深澤に腕を

引っ張られて胸元にすっぽり収まってしまった。

『………………ほんとやめて。深澤呼びでも
結構堪えてんのに、冷たくされた挙句警察呼ぶとか
言われて、俺ほんと無理だわ。』

「離してくれる？そんなに無理なら私に構わないで？
振り回さないでよ。深澤以上に私も苦しんでんの。
賭けの対象にされた私の気持ちなんてわかんない
でしょ？………お願いだから早く出てってよ
…深澤なんてもう嫌いなの」

私が嫌いって言葉を口に出した時

深澤が鼻をすすったと同時に私の首元に

雫が落ちてきた。びっくりして顔を上げると

深澤が真っ赤な目をしていた。

『…俺さっ、嫌いって言われて…涙出てくるほど、Aさんのこと好きなんです。
あぁ、もう、だっせぇな、ほんと…』

必死に涙を止めて、深呼吸して深澤は

ポツポツ話し始めた。

『正直、初めは渡辺たちと自分達の部署の
お局を誰が早く落とせるか賭けてた。』

「さいてー。」

『うん、ほんとに最低だと思う。
でも、Aさんは中々落ちなくて焦ったあげく
「好きになりそう」っ思わず言っちゃって。

そしたら、もうすでに好きだよ。とか
言われたから…良し、勝った！とか思って
普通に喜んじゃって…。』

「さいてー。」

『Aさんのさいてー。は刺さるからやめて…

でもね、付き合ってからAさんの色んな顔を
知る度に可愛くて仕方なくて。しかも、夜は最高に
えろいし…』

「…きらっ」

『ごめんなさい、嘘です。いや、嘘じゃないけど。、もう、本当その言葉はやだ。、』

「言わないから、続けて？」

『色んな顔を知れて、他のやつに見せたくねぇ
って思ってて。俺、本気でAさんのこと
好きになった事に気付いたんだ。

その辺から俺、周りに公言するようになったのよ。
だから渡辺たちにもちゃんと言ったよ？
俺の彼女だからもう、賭けはしないって。』

Aさん、誰かから俺達が賭けてた事
聞いちゃったんだよね、きっと。
だから、別れてほしいって言ったんだよね？』