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意識の淵から落とされると、目の前に広がる光景に自己嫌悪に陥るしかなかった。
少し開いた口から小さな寝息が聞こえてくる。身体に伝わる温もりは閉じ込められた腕からで。
寝返りを打ち、どうにか彼を起こさずに抜け出そうと体を少しずつ動かすと、それに合わせて腕が追いかけてくる。朝からどうして感傷的にならなくちゃいけないのだろう。恨みたくなるその腕をそっと引き剥がしながらこれで最後だと思ったら尚更ベッドから出られない。
もう一度だけ、彼の寝顔を焼き付けようとまた寝返りを打った。
するとさっきと違って、大きな目が少しだけ開かれた後数回瞬きを繰り返した。
「はよ」
『…おはよ』
自然に身体から腕が離れていって、少し寒さが肌に染みた。ベッドに横たわったまま、天井を見て欠伸を繰り返すものだから何だか悪い気持ちになってしまって横顔を見つめながら呟いた。
『眠れなかったよね、ごめん』
「んーん。ぐっすり寝れたよ」
これは優しい嘘だ。目の下のクマが何よりそれを物語ってる。ちゃんと寝ないとすぐ顔に出るから。
そのまま体を起こさないまま、天井を眺めていると隣でふっと微かに笑う声が聞こえた。すぐに顔を見れば目のシワがくっきりと浮かび上がっていて。何が可笑しいのだろうと、不思議に思っていると彼は口を開いた。
「朝弱いの変わんねえのな」
『…樹もじゃん』
なんて可愛げのない返しをしながら手をついて体を起こすと、手首に冷たい温度が染みてきてそれが樹の手だということは意識しないようにした。
『樹？』
「…もう起きんの」
『もうって、9時だよ？』
「……もうちょっと、」
そう言って私の手を引きシーツの波に誘う彼の瞳に溺れそうになるのを気付かない振りをして、私はそのままされるがままベッドに逆戻りしていた。
向き合う様な体勢になり、私の手首を掴んだままそーっと離すと、自由になった指は私の左手へと伸びてきた。
薬指の重みを、腫れ物を触れるかの様に優しく触るのがどうしようもなく私の心を揺さぶるから。麻痺した様にその指先の感触だけ全神経が集中していた。
そしてそのまま顔を近づけて、少しの間ギュッと目を閉じて口付けた。それが終わるまで私は動く事が出来なかった。やっと『じゅり、』と声にならないようなものを吐き出すと彼はそれにこう答えたのだ。
「今日は俺の番」
それだけ言って私の胸元に頭を寄せた。私は何も言えずに彼の頭に手を乗せて再び目を閉じた。
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絹(プロフ) - 菊池わた�擦気�» ありがとうございます（ ; ; ）書き手さんからそう言って貰えて嬉しいです〜！ (2019年12月19日 1時) (
レス) id: 60cdcfbbf9 (このIDを非表示/違反報告)
菊池わた��(プロフ) - 切なくて重くてすごい面白かったです！一気に読み終えてしまって自分でもびっくりしています。笑 私もこんな作品を書けるように頑張ります！ (2019年12月16日 15時) (レス) id: e0301e7fb0 (このIDを非表示/違反報告)
絹(プロフ) - ささん» ご愛読ありがとうございます（ ; ; ）自分で書いていても樹のシーンは苦しい気持ちになってます、、のんびりですが頑張ります(^_^) (2019年12月8日 20時) (レス) id: 60cdcfbbf9 (このIDを非表示/違反報告)
さ - 切なくて、何回も読み返しています。特に樹くんのターンになるといつも胸が締め付けられます。これからも更新楽しみにしています。ご自愛ください。 (2019年12月7日 22時) (レス) id: 5b9eda9a88 (このIDを非表示/違反報告)
絹(プロフ) - ぶーさん» ありがとうございます(TT) がんばります！ (2019年11月8日 22時) (レス) id: 60cdcfbbf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絹
| 作成日時：2019年10月2日 5時
