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ドアまでに少し段差があり、私は樹の首に腕を回すしかなかった。久しぶりのこの感覚に、どうしても抗えなくて今度は私が反対側を向くしかなかった。片手で支えられ、ドアを難なく開けて中に入ると耳元で声がした。
「痩せたな、」
そのまま上がり框に降ろされると、樹は私の分のスリッパだけを出して自分は履かずにそのまま廊下を進んでいった。そんな事を囁いて行くなんてずるい人だ、と。ツンとした鼻腔を正常に戻すように一息ついて私も彼の後に続いた。
付いていったリビングと思われる部屋はとてもシンプルだった。必要最低限の家具だけで意外と整理整頓されてある。部屋を見渡す私に気付いたのか、じろりとこちらを見る彼と目が合った。
「紅茶しかないけど、いい？」
『うん、ありがとう』
そっと微笑んだけれど、すぐにそっぽを向かれてしまった。
顔も見たくないか、と。もう彼にとっては私の存在は過去でしかないんだな、と淋しくなる資格もないのにと、また感傷に浸っている自分がいた。
ソファーの前のテーブルに置かれたカップに導かれるように私もソファーに座った。樹は少し離れた椅子に腰掛けていた。
今思えば彼に紅茶を淹れてもらうなんて初めてかもしれないななんて、あれから月日が流れたことは間違いないのに私だけ取り残されている気分になるのだった。
沈黙が流れても取り立てて気まずくなるような心地はしなかった。彼がどうかは分からないけれど。時刻は零時をまわったところだ。
「風呂沸かすから、入れば？」
『、いいの？』
「ん」
『ありがとう』
淹れてくれた紅茶で体を温めて二人で何を話すわけでもなくただ点けられたテレビの深夜番組を眺めていると、すぐに風呂が沸いて先に入らせてもらうことになった。
浴室に入ると昔と変わらないシャンプーとリンスが並べられていて胸がきゅうと音を立てたことに気付かないふりをして、シャワーのひねりをひねった。
音を立てて排水溝に吸い込まれていく水を見つめながら自分の弱さと向き合わずにはいられなかった。
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絹(プロフ) - 菊池わた�擦気�» ありがとうございます（ ; ; ）書き手さんからそう言って貰えて嬉しいです〜！ (2019年12月19日 1時) (
レス) id: 60cdcfbbf9 (このIDを非表示/違反報告)
菊池わた��(プロフ) - 切なくて重くてすごい面白かったです！一気に読み終えてしまって自分でもびっくりしています。笑 私もこんな作品を書けるように頑張ります！ (2019年12月16日 15時) (レス) id: e0301e7fb0 (このIDを非表示/違反報告)
絹(プロフ) - ささん» ご愛読ありがとうございます（ ; ; ）自分で書いていても樹のシーンは苦しい気持ちになってます、、のんびりですが頑張ります(^_^) (2019年12月8日 20時) (レス) id: 60cdcfbbf9 (このIDを非表示/違反報告)
さ - 切なくて、何回も読み返しています。特に樹くんのターンになるといつも胸が締め付けられます。これからも更新楽しみにしています。ご自愛ください。 (2019年12月7日 22時) (レス) id: 5b9eda9a88 (このIDを非表示/違反報告)
絹(プロフ) - ぶーさん» ありがとうございます(TT) がんばります！ (2019年11月8日 22時) (レス) id: 60cdcfbbf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絹
| 作成日時：2019年10月2日 5時
