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"どうしたの？今どこ？"
冷静に考えれば京本くんの焦った声なんて初めて聞いたけれど、そんなことも御構い無しに電話を切ってソファに投げ捨てると着の身着のまま外に出た。
当てもなくひたすら歩いてふと空を見上げて、私の心を表す鈍色が広がって余計に視界がぼやけるのだ。空まで私を慰めようとはしてくれない。
気持ちを押さえ込んで前を向くと潮の匂いが風につられてやって来た。そのまま匂いを辿ってトボトボと歩くと小さい砂浜と海が広がっていた。こじんまりとした所でもう日暮れに近付いていて人影は見えない。
そのまま堤防に座って風を受けながら限りなく続く海原を目に映していた。
嫌でも思い出す、あの海に来た日の事を。
違う場所なのに贅沢な記憶が脳を刺激して涙を誘うのだ。私はこの世界が欲しかったのか、と。
______今、幸せでいてくれているのかな
暫くして気が付くと海と空との境界が分からないほど暗くなって夜の海が私を誘う様に、寄せる波がこちらまでの距離を詰めてくる。私もそれに釣られて波打ち際に歩き出していた。靴が濡れて駄目になることなんてどうでもよくなったんだ。
海は冷たくて、でもすぐに慣れて心地よい。ずっとこのままでいいなんて思うくらい。
そのまま海へと足を進めようと一歩を踏み出した瞬間に後ろから突然雲間から太陽が顔を出したみたいに温もりを感じた。それと同時に懐かしい気持ちになるのは
『…どう、して』
潮の匂いに混ざっていてもどんなに時間が経っていても、暗闇で見えなくても
抱き締める優しさとほんのり感じ取る重さで分かってしまうんだ。
「なんでこんなとこいんだよ、……馬鹿」
『……樹』
お月様、太陽には秘密にするからどうか抱き締め合う事だけお許しください。
でもすぐに力を弱めて私の身体から手を離した彼は太陽の味方なのね。それでも突き離さない優しさにまだ少し期待してしまう自分の浅ましさは尽きる事はないのだと自覚する。
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絹(プロフ) - 菊池わた�擦気�» ありがとうございます（ ; ; ）書き手さんからそう言って貰えて嬉しいです〜！ (2019年12月19日 1時) (
レス) id: 60cdcfbbf9 (このIDを非表示/違反報告)
菊池わた��(プロフ) - 切なくて重くてすごい面白かったです！一気に読み終えてしまって自分でもびっくりしています。笑 私もこんな作品を書けるように頑張ります！ (2019年12月16日 15時) (レス) id: e0301e7fb0 (このIDを非表示/違反報告)
絹(プロフ) - ささん» ご愛読ありがとうございます（ ; ; ）自分で書いていても樹のシーンは苦しい気持ちになってます、、のんびりですが頑張ります(^_^) (2019年12月8日 20時) (レス) id: 60cdcfbbf9 (このIDを非表示/違反報告)
さ - 切なくて、何回も読み返しています。特に樹くんのターンになるといつも胸が締め付けられます。これからも更新楽しみにしています。ご自愛ください。 (2019年12月7日 22時) (レス) id: 5b9eda9a88 (このIDを非表示/違反報告)
絹(プロフ) - ぶーさん» ありがとうございます(TT) がんばります！ (2019年11月8日 22時) (レス) id: 60cdcfbbf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絹
| 作成日時：2019年10月2日 5時
