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沈黙が二人の間を通り過ぎるのは少し時間がかかった。私は次に掛ける言葉を探していた。それ以上に動揺していた。
こんな冷静に別れを伝える自分に。冷たさに。
次に口を開いたのは彼の方だった。
「…………しょ」
『え？』
「京本くんでしょ」
『……』
「何を吹き込まれたの？バラすって脅されてるの？」
こんなに弱々しく話す彼を見たく無かった。初めて見た感情的になる姿。あの夜の海で家の話をした時の海を見つめる表情と、今の表情とはよく似ていた。
怯え、ただそのもの。
私が、そうさせている。私という存在が彼を弱くさせている。
一方的に突き離して、分かってしまった。
私が羨む程、強く生きてきた彼を
私が弱くしてしまったのだった。
その姿に尚更私の決心は揺るがなかった。
『私が決めたの』
「……」
「何で」
『……樹、』
「何で？」
理由なんて、痛い程分かっている筈なのに。問い掛け続ける心情は私が、私だけが一番理解していた。私も彼の立場なら、同じことをする筈だから。
けれど自分の感情だけを優先させることの愚かさを
許容し続ける程の子供心など忘れてしまった。
________いや、忘れたのだ。
たった今、誰よりも愛おしい人の前で。
これだけ、ボロボロになるまで大切に想ってくれた彼を、
鳥籠から逃がそうと決めた。
『………明日からは、姉弟だよ』
きちんと顔を見て、いつもの様に笑うのだ。
彼がすぐ逃げられる様に。
私を憎んででも、その翼を開こうとする様に。
憎むなら、私だけを憎む様に。
避けてきた言葉を、私は彼にナイフの様に突き付けた。
私も、彼も、ボロボロになって
込み上げてくるモノが零れ落ちない様に、歯を食いしばった。
彼もそうしている様に。
しばらく虚空を見つめて、表情が見えないところまで顔を下げたのが見えた。
彼は少し息を吸って、言葉を吐いた。
「……分かった。でも、一つだけ頼みがある」
『、うん。いいよ、何？』
顔を上げた彼の顔をまともに見れるまで、少し時間がかかってしまった。綺麗な顔だと思った。
何度も愛おしいと心が叫んだ顔だと思った。
言葉を紡ぐ唇が、何度も私に触れた唇が動いた。
「今日が終わるまで、側にいさせて
お前の彼氏でいさせて」
彼は最後まで私が人生を賭けて愛した男だと、私は実感したのだ。
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：絹(プロフ) - みなさん» ありがとうございます〜(/ _ ; ) 期待に応えられるようにがんばります◯ (2019年8月4日 0時) (
レス) id: c52fa03a53 (このIDを非表示/違反報告)
みな(プロフ) - 何回読み直しても飽きないです^_^ (2019年8月2日 1時) (レス) id: fa95af4103 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - 更新待ってました！ (2019年6月22日 16時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - 更新していただきありがとうございます！ずっと待ってました！ (2019年3月7日 11時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
さやめめ(プロフ) - 私もとてもショックを受けましたが、またこうして更新をしていただき有難いです。とても楽しみにしていました、これからも応援しています。 (2018年12月1日 15時) (レス) id: 0eff97111c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絹
| 作成日時：2018年4月2日 19時
