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久しぶりに京本くんに呼び出されたのは大学から３駅離れた場所だった。樹の最寄りのこの駅は一人でいるには心許なかった。先にカフェに入ってしまわないと何かが崩れそうで足早に店に入った。
「Aさん」
『…風磨くん』
「騙して、すいません」
店員がメニューを持ってくるまでの時間が妙に長く感じた。スローモーションでも見ているみたいに周りがゆっくり見える気がした。
「アイスコーヒーで」
即座に決めてメニューを返すと、店員は踵を返した。戻って行くのは早送りに見えるくらいすぐに感じた。
「…親友としての独り言です、あくまで」
私はそのまま何も言わずにその独り言に耳を傾けた。
「不安定で、脆くて、痛々しくて、見てられないんです。
貴女が居なくなってから」
勘の鋭い風磨くんだから気付いているであろうことも分かっていた。でも彼が風磨くんを信頼しているのが私には分かったから。誰に認められる訳でもなかったけれど、唯一の味方でいてくれると。そんなことを烏滸がましくも思っていたのかもしれない。
「お兄さんと結婚することは知ってます。上手くいっていないってことも。なら、」
その後に飲み込んだ言葉が私の耳に届くことは無かった。風磨くんが何を私に望むのか。私は考えるこを放棄する他なかった。
途中から独り言にしては熱のこもった口調で吐き出した風磨くんは顔を下に向けていた。両脇に伸びた前髪で鼻より上は見えなかったが、唇を噛んでいるのが見て取れた。
『…ただの遊びだったよ、それ以上でもそれ以下でもない』
「……」
『血の繋がらない弟だし、都合良かったから』
どうしてこんな言葉が湯水の様に溢れてくるのか。やっぱり考えるのをやめた。
『もう行くね、これで払って』
テーブルの上に千円札を置いて、立ち上がりドアの方へ足を向けると同時に手首を掴まれた。
「一つくらい、本心を言って帰ってください。
それまで、離しませんから。」
そう告げた彼の瞳に私を捉えて離さない力強さを感じて、逃げられないことを確信した。それに気付いたのか、どんどん緩められる手首の枷を取り払って息を吸い込んだ。
『………樹のこと、よろしくお願いします』
頭をしばらく深く下げて、頭を上げながらドアの方に向かって歩き出した。
まだ枷が付いているみたいに、身体が重くて。
擦れた傷口から血が出るのが分かった
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：絹(プロフ) - みなさん» ありがとうございます〜(/ _ ; ) 期待に応えられるようにがんばります◯ (2019年8月4日 0時) (
レス) id: c52fa03a53 (このIDを非表示/違反報告)
みな(プロフ) - 何回読み直しても飽きないです^_^ (2019年8月2日 1時) (レス) id: fa95af4103 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - 更新待ってました！ (2019年6月22日 16時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - 更新していただきありがとうございます！ずっと待ってました！ (2019年3月7日 11時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
さやめめ(プロフ) - 私もとてもショックを受けましたが、またこうして更新をしていただき有難いです。とても楽しみにしていました、これからも応援しています。 (2018年12月1日 15時) (レス) id: 0eff97111c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絹
| 作成日時：2018年4月2日 19時
