双離 (ページ9)

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掴まれていた手の力が抜ける。
今まで顔をちゃんと見ていなかったけれど、近くでみると端正な顔をしていた。
彼はまだ手に持ったままのクマを見て、こう言った。

「このクマ、預かっておくよ」

『え、？』

「俺とふたりぼっちになるなら、またここに来て

そうしたら、これが大事なものか、そうじゃなくなるのか、分かるはず」

彼はキーホルダーと鞄を持って階段を降りていく。
貴方の背中には、何が書いてある？

ふたりぼっちになれる、なんて彼は言ったけれど、どういう意味？

何も分からないまま、教室に向かった。

教室に入ると、もうチャイムが鳴る時間だからか、生徒たちは揃っていた。怜央はいつも通り、たくさんの友達に囲まれている。

"レオは君しかいないって、言ってくれたの？"

彼の言葉がまた私の胸を抉る。
私には怜央しかいないけれど、怜央はそうじゃない。怜央にはたくさんいる。言わないのは怜央なりの優しさなのか、怜央はたくさんの人に愛される才能を持ってる。

そんなこと、言われなくてもわかってる。

自分が一番分かってるから、一番人に言われたくない。

鳴り響くチャイムの音を聞いて生徒が席に着く波をすり抜けて自分の席を目指す。
怜央と席が離れていて良かった。今は正直、顔を見ることが出来ない。

席についてすぐ、携帯のバイブを感じる。

ながつ：今日部活ないから一緒にかえろー！
ながつ：スタンプを送信しました

咄嗟に怜央の席の方を向くと、とびっきりの笑顔でピースしている。すぐに隣の男子に何してるの？ってつっこまれている。

一緒に帰れるかな、今まで通り普通に
そんな一抹の不安を抱えながら、机に伏せて目を閉じた。

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