双離 (ページ8)

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しばらく来ないと思っていたあの隠れ場所に足を運ぶ。怜央からもらったものとなれば話は別だ。

いつも通り図書館を通り抜けて非常口に進みながら、この場所以外に1人になれるところを探さなければ、と考えを巡らせる。
階段を上り、踊り場の隅から隅までくまのキーホルダーを探すが、どこにも見当たらなかった。

此処じゃなかったらどこで落としたんだろう。
教室や家までの道をもう一度探してみよう、と立ち上がった瞬間、

「これ、探してる？」

背後から聞こえた声に驚いて振り返る。
昨日ここで出会った彼の手にはキーホルダーが握られていた。

彼に近付いてキーホルダーをとろうとすると、キーホルダーを持った手が空にあげられた。
怜央ほど高くはないけれど、私が手を精一杯伸ばしても届きそうもない。
中途半端に伸ばした手は彼のあげられていない左手によって掴まれた。
昨日と同じように

昨日と違ったのは手を掴む力が弱まらないことだ。
そして底無しの深い黒い瞳が私を捕らえる。

『返して、あと、離して』

「離すより先に返してほしいんだ？そんくらい大事なものなの？」

『…関係ない』

「そんな大事なものがあるのに何で私は寂しいですって顔してるの」

彼の言葉にハッとして、みないようにしていたのに瞳をまた見つめ返す。
彼の瞳には光がない、怜央の瞳と真逆だ
私の瞳は？

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『…寂しくなんかない、私には怜央がいるから』

「ふーん、そのレオってやつからもらったわけだ、これは」

『関係ない』

「君はレオしかいないって言ってるけど、そのレオはどうなの

君しかいないって言ってくれたの？」

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さっきから私の胸のあたりに切り傷を付けていた言葉は、心臓を一突きにした。

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たしかに私はずっと怜央に言っていたけれど、怜央が私しかいないと言ってくれたことはなかった。
図星だ。この人に言われていること全部。

『うるさい、何でそんなに私に関わるの、ほっといて』

彼の手から離れようとするけれど、男の力に敵うはずもない。
また掴む力を強くされると、次の瞬間には彼の顔が近くにあった。びっくりして、身構えてしまう。怜央でもこんな至近距離で見たことはない。

「俺とならふたりぼっちになれるよ、ずっと」

それは甘い甘い愛のささやき？

それとも苦い苦い恋のはじまり？