双離 (ページ34)

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私は担任に呼び出しされた怜央を待っていた

教室で参考書を開いて当てもなくページをめくっていた

"そんな見つめられたら集中出来ないよ"

"勉強ダルい"

"俺だって普通の男子高校生だからね？"

こんなとこにまで現れてくる彼がどうしようもなく愛おしくて

それが切なくて

この世界に散りばめられた影の多さに、また絶望するんだ

同じ世界にいられないことは戒めか

ただ真実を聞くことさえ許されなかった私が

救われることなど、有りはしない

怜央といることが贖罪になるのだとしたら

私はそれを甘んじて受け入れよう

それしか、道がないのなら

私に出来ることがそれしかないのなら

「Aちゃん」

慌てて声がした方へと体を向けると、怜央と仲が良かった阿部顕嵐の姿が見えた

彼は辺りを見渡して私に近づいてきた

「信じてくれなくてもいいから話だけ聞いて」

そう、ただ真っ直ぐ私の瞳を見て話し出した

「あの日の朝、ながつと松村が話してたのを見た

何を話してたかは分からないけれど、松村がながつに頭下げてたのだけ見えた」

二人に面識はなかったはず、しかも何で北斗が怜央に頭を下げるなんてこと

「松村はAちゃんに迷惑かけたくなかったんだと思うよ」

『え、？』

「あの騒ぎで、松村がいなくなったら矛先はAちゃんに向かうことは止められなかったし。

きっとながつに頼んだんだと思う、Aちゃんのこと」

北斗が、私のために

阿部くんの憶測でしかなくても

私にとって十分な幸せだった

『あり、がと』

「別に、俺は

今のながつといるAちゃん見てらんないから」

見てらんない、か

阿部くんに言われると何だか説得力があるのは何故だろう

『本当に、ありがとう。少し、考えてみる』

「うん。あ、あと松村は保健室の先生と仲よかったって聞いたことある。聞けば何か分かるかも」

阿部くんはそれだけ言い残して教室から出て行った

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