取り返すボロネーゼ ページ6
Aside
何を作ろうかと冷蔵庫を開ける。
野菜はもちろん、肉や魚も新鮮なのが揃ってる。
A「滝沢さん、何かご要望はありますか？」
タ 「キミの得意料理で構わないよ。 それとも？
僕に食べてほしい料理があるのかい？」
思っても見なかった返事が返ってきた。
昨日、あった事は全て滝沢さんに話している。
食べてほしい料理・・・ 思い浮かぶ物が１つ。
A「・・・ハイ、食べていただけますか？」
タ 「昨日から楽しみにしてるんだ。
今さら何が出ても、却下なんて出来っこないよ」
メニューは決まった。 冷蔵庫と棚から、材料を取り出す。
まずは、鍋でパスタを茹でる。 固さはアルデンテ。
隣のフライパンでパスタソース作り。
刻んだ玉ねぎとミンチ肉を、オリーブオイルで炒める。
ミートソースとの違いは、肉の量が多いところ。
玉ねぎが透き通ってきたら、トマト缶を投入。
ケチャップとコンソメで、ソースのメインになる。
隠し味に醤油を少し。 塩胡椒で味を整える。
ちょっとしたデミグラスみたいな風味になる。
パスタを絡めて完成！
A「ボロネーゼです」
タ 「いただきます」
あの日、苦い思い出が出来てしまったボロネーゼ。
滝沢さんに認めてもらえれば、料理のトラウマを乗り越える
一歩踏み出す勇気がもらえる。
タ 「うん、美味しい。 元気がもらえる味だね」
A「本当ですか！？ ・・・よかった」
驚いて、思わず立ち上がった。
認めてもらえた安心感で、力が抜けて座り込む。
タ 「こんなに温かい料理、久々に食べたよ。
普段は騒がしいか、緊張するご飯が多かったから」
A「ありがとうございます。
料理作るの、ちょっとだけ怖くなくなりました」
お礼を述べて、帰る準備しようとした。
タ 「そうだ！ちょっと、俺に提案があるんだけど」
A「何でしょう？」
タ 「僕の仕事での知り合いに、
集中するとご飯を忘れかける人らがいてね？
その人達の面倒を、キミが看てくれないかな」
A「それって、家政婦ですか？」
タ 「要約するとね。 もちろん、貶すヤツはいない」
店に帰れば、また何か言われるかもしれない。
せっかく取り戻した自信を、また失うのは嫌だ。
A 「・・・よろしくお願いします」
長い長い１０秒考えて、家政婦になるのを決めた。
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作者名：flavor | 作成日時：2022年6月4日 20時
