■差し伸べられた手 ページ4
Aside
気付いた時には、車で海に向かっていた。
風が強く吹いている。
足下に広がる海は、荒れてて白波が立っている。
タ 「お嬢さん、見かけない顔だね？」
突然、男性に声をかけられた。
私は普通に海を見ていたつもりが、柵に手を添えていた。
A「す、すみません！ 考え事してて・・・」
タ 「そう、思い詰めてたワケじゃないんだね？
僕の仕事柄、女性には気を付けないといけないんだけど」
心配そうに私を見てる。
A「勘違いさせてしまってすみません」
タ 「いや、いいんだ。 ・・・あそこ座ろうか？」
近くのベンチに促された。
タ 「改めて、はじめまして。 僕は、こういう者です」
A「雪城Aです」
名刺には、ジャニーズ事務所 滝沢秀明とあった。
芸能人に詳しくない自分でも、すごいとわかる事務所だ。
A「どうして、ココに来たんですか？」
タ 「荒れた海は、がむしゃらに努力してた頃と重なってね。
気合いを入れ直すためにも、こうして来るんだ」
まっすぐな目で、滝沢さんはしゃべってた。
タ 「キミは？ 何もないのに、あんな所にはいないでしょ」
この人になら、話が出来るかもしれないと思った。
A「私、フランベルジュで料理作ってるんです」
タ 「あぁ、あのレストランか」
そこで今まであった事、良いことも悪い事も全部話した。
タ 「そうか、それは大変だったね。
その様子じゃ、しばらく仕事はツラくないかい？」
正直、行きたくない。 また、黒瀬さんに会うと思うと。
それが、表情に出てたらしい。 滝沢さんから、提案してきた。
タ 「そうだ、Aさん。 明日、僕にお昼作ってよ！
お店に比べたら劣るだろうけど、
設備はある程度ウチで揃ってるよ」
驚いた。 ・・・この人は、何を考えてるんだろう？
A「・・・明日の仕事、お休みしろと？」
タ 「急用が出来た事にできる？ 有給、１日使うけど」
A「朝、職場に電話します」
タ 「じゃあ明日、僕の車で迎えに行くよ。
連絡先、コレ入れてもいいかな？」
そう言って、今日は別れた。
次の日の朝店にお休みの旨電話したら、
店長から心配と気遣いのメッセージをもらった。
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作者名：flavor | 作成日時：2022年6月4日 20時
