僕の居場所 5 【男主】 (ページ46)

今日:14 hit、昨日:14 hit、合計:79,100 hit

・ページ46

.

ライブが始まり、中盤に差し掛かった頃関係者席に1番近い花道に行くとAくんが座っていた席に誰かが座っていた。

ステージから関係者席は少し暗くてあまり見えなかったが、確実にそこに誰かがいた。
そして、俺の近くに来たAくんもそこに誰かがいることに気がつくと少し顔をこわばらせた。

「…しっかり見てくれるといいな」

と、マイクに入らなくて近くにいないと聞こえないようなそんな小さな声でAくんは呟いた。
そしてAくんは俺に微笑むとまた花道を歩きだし、ステージへと足を進めた。

Aくんが発したその言葉は何を意味していたのだろうか
俺にはその意味が理解できたような、でも出来なかったようなそんな気持ちだった

俺らの仕事は誰かに見てもらうことで意味がある。
それが誰ふり構わず見てもらうことで俺らが今ここにいる

西「…」

誰ふり構わずとは言ったが、Aくんが呟いたあの一言には他の意味が含まれているような気がする
その"誰か"とは一体誰なんだ？

Aくんのご両親？

いや、それは有り得ない
家族の話を滅多にしないAくんが俺にだけ気づくようにあんなことを発する訳が無い。

なら友達？
それも無いな。

前に一緒の撮影をした時もライブには友達は誘わないって言ってた。
それが変わったのかも知れないが、友達に対して少し切なそうになんて言わないはずやから

藤「大吾！次移動！」

そんな事を考えいたら次は俺らの番ではなくなり、丈くんから移動の言葉が聞こえた。

西「ごめんっ！今動くわ！」

アカン、しっなりせな。
俺やってちゃんと見てもらわなアカンねん。

藤「なんや珍しいな、大吾が移動忘れるん」
大「んな、なんかあったん？」

俺らが移動をし終わり、舞台裏で衣装チェンジをしていると丈くんとはっすんのふたりが話しかけてきた。

西「いやちょっと考え事してたわ」
大「珍しいな、大吾がライブ中に考え事なんて」

大「あ、もしかして夕飯のことでも考えてた？」
藤「あほか、大橋ちゃうねんからそんなことあらへんわ」

2人は俺が珍しいことをしたことに気づいたのか笑いに変えようとしてくれた。

西「いやご飯のこと考えてたわ」
藤「考えてたんかいな！」

俺は他の4人がこちらの様子を伺っていることに気づき、2人に合わせてボケることにした。
変な心配はさせられんからな。

特に恭平辺りにはな…｡