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阿部ちゃんが吐けるだけ吐き続けるのを待ち、
ようやく咳に嘔吐物が混ざらなくなったのを見て
「一回袋外すよ」と声をかけた。
阿部ちゃんが前屈みになっていた身体をゆっくり起こす。
ペットボトルを差し出すと大人しく飲み、
一旦隣に置いてきた薬を差し出すと、
その目が何かを躊躇うように一瞬泳いだ。
「落ち着いたうちに薬やっておいた方がいいよ」
「…うん」
阿部ちゃんが渋々薬を加えたのを見て、
俺は預かった吐瀉物の処理に向かう。
簡単に処理をして阿部ちゃんの元に戻ると、
彼は先ほど渡したペットボトルを両手で弄びながら、
俯いて幾分かマシになった空咳を何度か繰り返していた。
「…落ち着いてきた？よかったわ」
額にじんわりと汗をかいている。
さすがにタオルまでは持ってきてはいない。
俺がバタバタしていると、
阿部ちゃんは自分の手で汗を拭って
溜息と共に情けなく笑った。
「ずっとなん？」
その背中を静かに撫でながら聞いた。
「しばらくは落ち着いてたんだけど。
最近忙しかったからか、ぶり返しちゃったみたい。
…6人のときはこんなに酷くなったことがなかったし、ほとんど治ったと思ってたから言わなかった」
「そっか。しゃーないわ」
阿部ちゃんの話を聞いて、
そう相槌を打ちながら笑って見せると、
彼は不思議そうな顔をした。
「どしたん？」
「…いや、みんなに言うべきって言われるかなって思ってたから」
「なんや、そんなこと言うわけないやん」
俺は、阿部ちゃんがまだ握りしめていた吸入薬を奪って掲げる。
どうしたら、阿部ちゃんを困らせずにいられるかをその一瞬で考えていた。
「俺も喘息やねん。
阿部ちゃんより酷くないかもしれんけど」
これしまっとくで、と受け取った薬を元々入っていたポーチに入れ、俺はまだ息が上がっている阿部ちゃんの肩に手を添える。
ほんの僅かに感じていた警戒心が瞬く間に解けていくのが指先から伝わってくる。
「そっか…だから」
助かったよ、と悲しそうに笑う阿部ちゃんの姿がいつかの自分と重なって見えた。
肩の荷が降りた瞬間。
誰かの理解を得た時の安心感。
自分は随分前に、
こことは違う西の地で、その温かさを知ったのだ。
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葡萄 - 続き楽しみにしてます!応援してます! (2021年10月1日 7時) (
レス) id: 3255ffb603 (このIDを非表示/違反報告)
すばる(プロフ) - 初めましてすばるです。お話大好きです。haryuさんの学園のお話を読みたいのでパスワード教えて欲しいです。 (2021年3月12日 19時) (レス) id: 520852b95c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：haryu
| 作成日時：2020年6月8日 0時
