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「阿部ちゃん！」
自分が崩れ落ちた記憶はもはやない。
ただ、強打するはずの膝もお尻もどこも痛くなくて、
直前まで感じていためめの胸板をより近くに感じていた。
ラウールに名前を呼ばれて意識が浮上する。
「…あれ…俺本当に、」
ぶっ倒れているのか。
多少体調を崩すことはあれど、
ここまで言うことを聞かなくなったことはなくて、
自分が1番自分に戸惑う。
わからなくなるとまた呼吸が乱れる。
気がつくと楽屋のソファにいて、
めめに抱き抱えられた情けない状態のまま、
俺は身動きも取れず、ただ動揺することしかできない。
「大丈夫、大丈夫」
さっきとは違う声だった。
さっきよりも大きな手。
「ラウ、」
「さっき佐久間くんがやってたの見てた。
苦しくなっちゃうから何も考えなくていいよ、
大丈夫、大丈夫」
その逞しい末っ子の姿に、
思わずふふ、と笑い声が漏れる。
我慢して孤独になろうとしていた自分が馬鹿らしくなった。
そこに佐久間の姿が飛び込んでくる。
熱のせいか、ピンク色の髪の毛は霞んで見えた。
「ねぇ、さくま」
「ん？」
どんな時も持ち上がった口角が好きだ。
常に明るく上を向く彼を表しているみたいで。
「みんなやさしい」
「ん〜？なんでだと思う？」
こんなときに、佐久間はクイズを出題してくる。
それに、絶妙に難しいクイズだ。
「それはね、阿部ちゃんが優しいからだよ」
Fin.
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葡萄 - 続き楽しみにしてます!応援してます! (2021年10月1日 7時) (
レス) id: 3255ffb603 (このIDを非表示/違反報告)
すばる(プロフ) - 初めましてすばるです。お話大好きです。haryuさんの学園のお話を読みたいのでパスワード教えて欲しいです。 (2021年3月12日 19時) (レス) id: 520852b95c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：haryu
| 作成日時：2020年6月8日 0時
