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人通りの多いテレビ局の廊下を、
マネージャーの先導のもと走って、
無事次の現場に向かう車に乗り込んだところで、
「このあとって、どこでしたっけ」
と問うと、マネージャーは驚いたような表情で固まった。
申し訳無さそうな顔をするからいたたまれないが、
「大丈夫ですよ」と声を掛ける余裕すら、今は持ち合わせていない。
マネージャーは「すみません」を枕詞に、
次に向かうテレビ局を教えてくれた。
そうだ、クイズ番組の収録だ。
言われてようやく思い出す。
乱暴に詰め込まれた資料の中から、
今日の日付のものを取り出して、内容を確認した。
本当はこんなことしたくない。
ちゃんと一つひとつ大切に取り組みたいし、
事前にたくさん準備して挑みたいのに、
限りある時間はそれを許してくれなかった。
頭がぼんやりする。
もうずっと、微熱が続いていた。
資料の文字を追っていると徐々に視界が霞んできて、
これはまずい、と思って一度だけ目を閉じた。
「阿部ちゃん、着いたよ」
体感時間は一瞬だった。
しかし、次に目を覚ました時にはすでにテレビ局についていて、
俺は慌てて車を降りた。
楽屋に着くなり、バタバタと用意された衣装に着替え、
メイクを直しヘアセットをしていく。
機械的で、流れるような作業。
分刻みのスタンバイだった。
もとからギリギリのスケジュールだったから、致し方ないのは分かっているけれど、
自分の不調をどこかに伝える暇すら与えられない。
ふっかが「頑張れ」と言ったあの言葉を思い出して奮い立たせる。
不調に気付いてほしいとは思わない。
迷惑もかけたくない。
だけど、「俺は分かっている」と直接言葉にせずとも伝えてくれた存在がいるだけで、
頼れる相手がいると思えるだけで、救われる自分がいる。
この収録さえしっかり終わらせたらいい。
「…よし」
一度小さく自分に気合を入れて、
俺は意気込んでスタジオへ入った。
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葡萄 - 続き楽しみにしてます!応援してます! (2021年10月1日 7時) (
レス) id: 3255ffb603 (このIDを非表示/違反報告)
すばる(プロフ) - 初めましてすばるです。お話大好きです。haryuさんの学園のお話を読みたいのでパスワード教えて欲しいです。 (2021年3月12日 19時) (レス) id: 520852b95c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：haryu
| 作成日時：2020年6月8日 0時
