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「そんなもん、阿部にさっさとレジリメンスかけりゃいいじゃん」
佐久間の顔がギクリと引き攣る。
冗談で言ったつもりだったが、こいつ、試したな。
それで、あっさり失敗したとかそんなところか。
「魔法で人の心を動かすなんて外道すぎんだろ！」
「下手な嘘つくなよ、阿部に使ったんだろ」
「うぐっ…いやまぁ、使おうとしたよ？したんだけどさぁ、阿部ちゃんの方が呪文使うのが早いし上手かった」
阿部にコテンパンにされた翌日、背後から忍び寄ろうとしたところを勘付かれ、再び返り討ちにあったらしい。
やっぱりな、と思いながらも、悔しそうな顔をする佐久間に心から同情する。
「お前じゃ無理だって」
「…なんだよ、なんか知ってんのかよ」
「知ってるもなにも、阿部は呪文学の授業飛び級してるぞ」
「え、そうなの？」
「うん」
しかも俺らよりも成績は遥かに優秀だと伝えれば、大きな目が「何言ってんの？」とパチパチと瞬きを繰り返す。
そりゃあ、呪文学の成績が並の佐久間が勝てるわけがない。
「…言えよ早く」
「いや俺知らねえから」
お前と阿部の事情なんて。
「てかさ、そもそもなんだけど。なんで、よりにもよって阿部に惚れたんだよ」
「へっ？…そんな別に……ホレテナイヨ」
「だから下手くそかって。オラさっさ吐けよ。もう寝たいんだよ。俺の気まぐれな性格知ってんだろ」
明日は休日だが、朝早くに別の寮の友人たちと湖に出かける約束をしている。
多分だけど、涼太も一緒。
だから寝過ごすわけにはいかない。
言い淀んでいる佐久間にそれを伝えると、追い詰められた佐久間はすぐに白状した。
良い奴だな。
「だから…あーもうっ、上手く言えないんだけど、なんかドキドキしたんだよね。杖を喉元に当てられた時の阿部ちゃんの鋭い視線に」
「待て待て、なんだその状況」
お前もお前だが、阿部も普通にやばい奴じゃん。
思わず勢いで立ち上がりそうになる俺を、まあまあ、と佐久間がなんでもないことのように宥めた。
「阿部ちゃんて雰囲気が柔らかいからそんな感じしないんだけどさぁ、三白眼？って言うの？笑ってないと目力があって超かっこいーの！」
自分の命が危機に晒されている時にか？
第一、杖を喉元に押し付けられる状況なんて、命に関わる重大な何かが起こる時だ。
佐久間がそれを知らないはずないのに、どうしてこの男はそんなにニコニコと笑ってられるのか。
「お前それさぁ…」
盛大にため息をついた。
「どう考えても吊り橋効果だろ」
続く (更新停止中)
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作者名：そらちね | 作成日時：2023年9月28日 0時
