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「あのさ、俺は最初から佐久間に忠告してたからな。純血とか寮がどこだとか、そういう古臭いもんばっか気にしてる魔法使いってだせえぞって」
俺の指摘に佐久間が苦しそうに顔を歪めた。
「うっ、でも、翔太だって元々は純血主義だったじゃん…」
「ここに来て価値観が変わったの。成長したんだよ」
「…グリフィンドールにお前の大好きな舘様が行っちゃったからって良識人ぶるなよな」
「んだよ、売られた喧嘩は買うからな」
「あっ、すんません、冗談です」
睨みつけると元から小さな体をさらに縮こめて謝ってくる。
元気があるんだかないんだか、佐久間の情緒は不安定だ。
「最近お前の様子が特に変だって噂には聞いてたけど、なるほどな、阿部絡みだったわけか」
「え、変って何？どんなとこが？」
「天下の佐久間様が、他の寮生にも優しくしてるらしいじゃん」
今までのお前らしくねえな、と言えば、佐久間は眉間に皺を寄せて首を振る。
「それはずっと世間知らずだったし、周りにおだてられて尖ってたからじゃん…今は違うよ。他の寮の奴らには酷いことしてきたって、すごく反省してる。だからそれを態度で証明するために、性格変えたの！」
でもそれは翔太だって一緒でしょ、と思い出したくもない過去の黒歴史をほじくり返されそうになり、誤魔化すように視線をそらした。
俺も佐久間と同じように、尖りまくっていた時期がある。
そのきっかけは、こいつとは全然違うんだけど。
「とにかく、今は純血が絶対とか、そういうのは全くない！……それに俺は自分が変だとか思ってねえから！」
ギャンギャンと、俺には元気よく噛み付いてくる。
「いや、変は変だろ。髪の毛ピンクじゃねーか」
ある日寮に戻ってきたら談話室に人だかりができていて、なんだと思えば、ソファにピンク髪の佐久間が座っていた時の衝撃たるや。
なんだその頭と、誰に聞かれてもあの場では頑なに理由を話さなかったが、でもヘラヘラと、嬉しそうにしていた。
「なんで授業で薬剤かぶったまま放置してんだよ」
俺には言えよ、とつつけば、
「それは…阿部ちゃんが、似合うって言ってくれたから…」
もじもじと照れる佐久間に、本気で吐きそうになった。
一ヶ月近く粘り、ようやく会話できたきっかけが、それだった。
そう口籠る佐久間に、俺は隠すことなく「めんどくせえな」という顔を向ける。
「重症だな」
佐久間の唇が不満げに尖る。
俺は呆れながら、椅子の背もたれに寄りかかり腕を組んだ。
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作者名：そらちね | 作成日時：2023年9月28日 0時
