Halloween side_nb ページ4
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佐久間を見かけたのは、寮の前まで涼太に送ってもらった帰りのこと。
今日はハロウィン当日で、しかも週末の金曜日。
こんなに最高な組み合わせは中々ないから、一日を通して学校中が浮かれていた。
夕食時から食堂で始まったハロウィンパーティーは今もまだ絶賛開催中で、例年通りであれば、食堂一帯は明け方まで騒がしいまま。
他の学校がどうなのかは知らないが、名門であるはずのこの学校はイベントになると、いろんなことに関して急にバカになることで有名だった。
例えば、普段は近づき難い厳格な先生が率先してハメを外すとか、
例えば、記憶が無くなるまで飲み続けた校長が、翌朝とんでもないところで見つかるだとか、
例えば、イベントごとがある日は寮の門限がないだとか。
いつもなら、点呼の時間なんてとうに過ぎている時間。
食堂からの距離が一番遠い、スリザリン寮までの道すがら。
喧騒を遠くに、人気のない湖へと続く外廊下を照らす、青白い満月。
とんでもなく雰囲気のあるシチュエーションにあてられ、人の気配がないことがわかると同時に、ちょっとばかりその場で盛り上がってしまった俺たちは、柄にもなく頬を染め合いながら余韻に浸っていた。
外廊下の一角。
柱の影に押し込まれるように、隠れるように抱きしめられた腕の中。
「長い時間引き止めちゃってごめんね」
そう言いながら耳元で優しく囁いた涼太の声に、色んなことを教え込まれた体が勝手に反応してびくりと震えた。
小さな吐息を吐き出す。
これは不可抗力だと軽く睨みつけた俺に、至近距離で形の良い眉が困ったように寄ったのが見える。
「次の休みまで、今はこれだけで我慢して」
「んっ、……分かってる」
今日何回目かなんて覚えていない口付けを交わし、ゆっくりと涼太の腕の中から離れた。
あっさりと離れる体温。
だけど、気持ちはまだくっついたまま。
こんなんじゃ全然足りない。
そんな瞳で俺のことを見つめる涼太の鼻先に、人差し指を軽く押し付けた。
お前が言ったんだからな、我慢しろって。
あと、俺だって全然足りねえっつの。
言葉には出さなかったが、ちゃんと涼太にはそれが伝わっている。
頬を撫でられ、その心地よさに目を細めた。
ゆっくりと降りてきた指が、唇の輪郭を優しくなぞる。
口を開いて軽く食むと、お互い笑った。
「おやすみ、翔太」
「おやすみ、涼太」
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作者名：そらちね | 作成日時：2023年9月28日 0時
