Two weeks later ページ10
入学式の翌日から、うっすらと懸念していた事象が起こり始める。
まあ平たく言うと、イジメ。
それも、まさかの寮内で。
寮の絆は何よりも強固だって入学前に聞かされてたはずなのに。
教科書が破かれていたり、物がなくなったり、それからありきたりだけど目の前で「マグルめ」なんて悪口を言われたり。
物損に関しては魔法ですぐに元通りだし、マグルと言われたところでただの事実なので痛くも痒くもないから今のところは平気。
人に向かって魔法を使えば処罰の対象になるからか、魔法使い様のイジメとやらは驚くほどアナログでとても人間臭い。
散々忌み嫌ってるマグルとやってること変わらないんだから、人間の本質的な問題かな、なんて分析してみたり感心してみたり。
もはや黙々と知識を吸収して魔法を使う俺の方がよっぽど魔法使いみたいっぽいじゃん、なんて思ってみたり。
そんな感じに初日こそ身構えたり不安を覚えたりしたものの、寝て起きてを三日ほど繰り返したところでどうでも良くなった。
入学して二週間が経つ頃には、同じ寮の魔法使い様が繰り出すこざかしいまでのイタズラを、どこか俯瞰して面白おかしく観察しながら日々を過ごしていた。
強がりとかでもなんでもない。
教科書がなくなったり、靴下に穴が空いたりしても、のらりくらりと過ごしている俺を見て気を揉んでいたのは、むしろふっかの方だった。
「ねえ阿部ちゃん、しんどくないの?」
「え、なんで」
「なんでって……だって実害出てるでしょ。教科書とか」
「すぐ直せるから魔法って便利だよね」
「いやメンタルエグいな」
食べ慣れないオートミールに牛乳を注ぎ、スプーンでぐるぐるとかき混ぜる横で、ふっかの呆れたため息が聞こえてくる。
朝日がのぼったばかりの食堂に顔をだす生徒は多くない。
食堂の扉付近の席に横並びに座りながら、早めの朝ごはんを食べるのが俺とふっかの日課だ。
基本は自分の寮のテーブルに座って食事をするのが慣例らしいけど、入学式の翌日から毎朝こうしてハッフルパフのテーブルに座っている俺が上級生に注意されたことは一度もない。
それどころか俺たちを見かけると「ふっかも阿部ちゃんおはよう〜」なんて親しげに挨拶すらしてくれる。
時々「これ持っていきなよ」なんて魔法界のよく分からないお菓子まで手土産に渡してくれることもある。
味は正直微妙なんだけど、その心遣いが何よりも嬉しかった。
今では自分の寮よりもハッフルパフの生徒の顔見知りの方が断然多い。
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みな(プロフ) - はじめまして。面白いです。ホウキとか杖とかも出てくるんでしょうか?続き楽しみにしておきます。 (9月15日 6時) (レス) id: 2fd29c3102 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そらちね | 作成日時:2023年9月13日 14時