魔法と思春期 skab (ページ7)

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ふっかと別れて寮に帰る道すがら、自分なりに今日の出来事や、それからこれから先どうすれば良いかを考えながら歩いていた。
ある種絶望的な理由ではあるものの、別に俺がマグル出身という理由で誰かに迷惑をかける訳ではない。
誰かが傷ついたり、死んでしまったりすることもない。
所謂マグルの世界にだって、こんな風に生まれとか性別とか、本人ではどうすることも出来ない非常に馬鹿馬鹿しい地位や身分を盾に不当な扱いを受けることがある。
まあ、あっちの世界にいた時に、俺もふっかもそんな扱いを受けたことはなかったけど。

日が傾き、蝋燭が点々と照らす薄暗い外廊下を進んだ先にひっそりと現れる、地下牢へと続く階段を降る。
年季の入った石階段はところどころ角が取れて欠けていて、二回ほど足を滑らせかけたところで観念して杖を取り出した。

「ルーモス」

ああ良かった、ちゃんと使える。
まだだいぶ弱々しいながらも浮かび上がった光を頼りに、残りの階段も慎重に進んでいく。
やがて行き止まりにたどり着くと杖をしまい、覚えたての呪文を口にすれば、壁に扮した石の扉が重々しく開いた。

「あ、おかえりなさ──」
「ばか、あいつだよ」

扉のすぐ近くの椅子に腰掛けていた誰かが、俺の姿を見ずに声を掛けようとしたのを別の誰かに咎められ、慌てて声を引っ込めた。
その声に気が付いたのか、それまで適度に騒がしかった談話室があからさまに静まり返る。
談話室全体はとても薄暗いというのにこの場にいる、おそらく全員がこちらを見ているんだろうな、という気配を感じた。

てか人のこと『あいつ』って。
いや、別にいいんだけどさ。

なんというか…魔法使いという存在──ことさらスリザリンの連中は、ずいぶんと可愛らしい奴らだな。
別に、褒めてる訳じゃなくてね。

しかしまあ、入学前に期待を寄せていた「魔法使い」というある種の空想でしかなかった存在が、実際はそんなに高尚な存在ではないということが分かったとなれば、ここでの生活は苦労しなさそうだ。

あとは、俺の精神力の問題。
目の前にいるのは魔法が使えるだけの人間。
俺だって今後は難なく魔法は使えるようになるはず。
そしたら何も変わらないわけで。
そう思うだけで、気持ちは随分と軽くなる。

日が落ちてから間もないため、点呼の時間にもだいぶ早い。
自室に篭って何かをするのも良かったが、ふと好奇心が湧いた。
天井が低く、奥行きのあるこの談話室の中を探ってみたくなったのである。