魔法と思春期 skab (ページ6)

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阿部ちゃんは頭が良い。
勉強ももちろんのこと、基本的な、人間としての地頭の部分が俺の何倍も優れている。
だから阿部ちゃんが大丈夫だと言うのなら俺なんかが心配しなくても大丈夫なんだろうな、という謎の根拠があった。
ちなみにこの男が導き出すであろう解決策が具体的にどんな内容なのか、興味はあるけどあえて聞こうとは思わない。
聞いたら多分、寝れなくなりそうだから。

自分で道を切り開くと決意を新たにした阿部ちゃんは、もうすっかり本来の元気を取り戻したようだ。
「ほっ」なんて勢いをつけて俺の肩から離れると、立ち上がり、んんーと身を捩りながらその場で大きく伸びをした。
息を吐き、座ったままの俺に振り返る。
笑ってしまうほど、清々しい顔をしていた。

「いやぁ、本当にふっかが一緒に入学してくれて良かった！」
声のボリュームがバカになってしまったのか、阿部ちゃんの大きな声が反響する。
側を歩いていた学生が、何事かとこちらに視線を向けているのが見えた。
「さすがふっか」
阿部ちゃんは周りを気にすることなく、俺だけを見て手を差し出した。

「そりゃどーも」
その手をしっかりと掴み、阿部ちゃんに引っ張り上げてもらいながら俺も立ち上がる。
ローブについた砂埃を軽く手で払いながら、見慣れない黄色を目に焼き付けた。
本当は阿部ちゃんも同じ寮が良かった、なんて今さらになって寂しさが込み上げてくる。
俺らしくない感情に、小さく頭を振った。

「俺には今のところふっかしかいないから、これからもよろしくね」
「今のところって何だよ」
そう突っ込んだ俺に、年相応の笑顔を見せてケラケラと笑う阿部ちゃん。
お互いに知り合いもいない中で摩訶不思議な学校に入学して、しかも阿部ちゃんは早々に厄介ごとに巻き込まれて。
だけどこの笑顔が見れているうちは、俺もそこそこ頑張らなきゃな、なんて無責任にも思えてしまう。
というか、阿部ちゃんはこの程度のことで悩んだり落ち込んだりするような、性格ではない。
それは魔法界にくる前、それこそマグルの時からずっと一緒にいた俺が一番よく知っている。

ひょろひょろした気弱そうな見た目だと思って阿部ちゃんに舐めてかかると、たちまち痛い目をみることになるからな！
なんて、誰一人顔を知らないスリザリン生相手に俺は心の中で中指を立ててやった。