魔法と思春期 skab (ページ46)

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「…ねぇ阿部大丈夫そ？」

渡辺先輩が俺の異変に気が付き、何とも言えない表情でこちらを見ている。
その後ろでは原因を知るふっかが呆れていた。

「あ、大丈夫です。発作みたいなもんなんで」

それ全然大丈夫じゃないやん！と騒ぐ康二を、勘のいいラウールが察して落ち着かせてくれた。
めめは何も分かっていない様子だったが、優しく俺の背中を摩り続けてくれている。
なんか、ごめんね。

渡辺先輩が食堂の真ん中あたりに座っているグループに呼ばれた。
視線を向けるとそこには佐久間の姿も見える。

「呼び止めてごめんなー」
「全然。じゃ俺行くわ」
「おー」
「お前らも、またな」

そう言って渡辺先輩はふっかだけでなく、俺たちにも軽い挨拶をしてその場を離れた。

喧騒の中心部へ飲み込まれていく渡辺先輩の背中を見送り、目黒に「もう大丈夫だよ、ありがとう」と感謝の気持ちを伝えると、すぐさま正面のへらへらした男を問い詰める。

「ねえちょっとふっか聞いてないんだけどいつ知り合ったのなんでタメ口なの全部教えろ」
「早い早い早い」

後輩三人が引いていたが、こういうのは気にしたら負けだ。
ぎろりと鋭い眼光をぶつける俺に対し、ふっかは余裕たっぷりにテーブルに置かれていたスープに手を伸ばす。
勿体ぶるようにゆっくりと一口飲み、またテーブルに置いた。
早よせい。

「翔太とは選択授業が一緒なのよ。ついでに歳と血液型も一緒」

ふっかが選んだのは占い学の授業。
これは前から聞いていた。
その時たまたま隣同士になり、簡単な運勢を占う事になった際にペアになり、そのまま意気投合したらしい。
人当たりの良いふっかの性格に渡辺先輩はあっという間に心を開き、しかもその流れで舘様とも仲良くなったという。

「ず、ずるい！」

こっちは佐久間で悩んでるって言うのに。
両手で顔を覆い、思わず漏らした本音に、ふっかが声を上げて笑った。

「阿部ちゃんもちゃんと話してみたら良いじゃん」
「渡辺先輩と？」
「違う違うそっちじゃねーよ、佐久間と」

はあ？
なんでその話に繋がるワケ？
そう目で訴える俺に、ふっかは続ける。

「ちゃんと向き合ってみたら、案外普通だったってこともあるじゃない？」
「……向き合うメリット、ある？」
「難しいこと考えずに、挨拶だけでも返してみたら良いじゃん」

あまり意固地になるなとふっかは言う。
自分でも薄々感じ始めていた核心を突かれてしまい、そんなことない、と言い返すのにずいぶんと時間が掛かった。