魔法と思春期 skab (ページ44)

今日:34 hit、昨日:5 hit、合計:61,706 hit

44 ページ44

先生だって驚いていた。

初めて教室で佐久間の姿を見かけた際には、眼鏡を何度か掛け直すそぶりを見せながら、

「佐久間さん、教室は合っていますか？」

とオブラートに包み忘れた失礼な聞き方をしてたくらいだ。

「はい！魔法薬学についてもう少し勉強したいと思って！」

よろしくピーマンでありまーす！なんて、この教室の雰囲気にそぐわない、大きな声でアホっぽいことを言う佐久間に、レイブンクローの人たちからの痛々しい視線が突き刺さっている。
でも本人は全く気になる様子もなくヘラヘラと口を開けて笑っているだけだったので、自然とその視線が同じ寮である俺にまで流れてきた。
予期せぬ注目を浴び、周囲に取り繕った愛想笑いをしながら、持っていた教科書でサッと顔を隠した。

なんだそのキャラは。
佐久間め、覚えてろよ。

だけど意外にも、授業が始まってみると佐久間はサボることなくきちんと真面目に出席しているし、課題集めだ授業の準備だなんだと先生の手伝いも率先して行っていた。
その甲斐あってか、最初は半信半疑どころか疑いの目しか向けていなかった俺以外の生徒も先生も、成績の良し悪しは別として、佐久間の真面目さとスリザリンらしくない社交的な態度に、早々に考えを改めてしまったようだ。

今じゃすっかりこのクラスのマスコットキャラクター的な立ち位置で、みんなに可愛がられている。
常に適度な距離を保ち、問い詰められても面倒だからと、周囲にバレないように無視し続ける俺の身にもなって欲しい。

とても楽しみにしていた週二回の魔法薬学の授業で、こんなに神経を使うだなんて聞いてないぞ。

「阿部ちゃん、なんか疲れてない？」
「そう、かな？ちょっと課題が終わらなくて昨日寝るのが遅かったからかも」

夕食時。
食堂でめめと横並びに座りながら食べていたら、背中越しに声が掛かる。

「違うでしょ。選択授業で佐久間と一緒だから気を揉んでんでしょ」

おい余計なこと言うなよ、とハッフルパフ寮の席に座っているふっかに振り向くと、その隣にはきょとんとした顔をでこちらを見ている康二と、そしてなぜかそこに当たり前のようにラウールも座っていた。

「え、まだ何かちょっかい出されてるの？」

佐久間という単語に反応したのは、隣のめめだった。
俺たちが座る向きを変えると、背中合わせに座っていたふっか達も同じようにこちら側を向く。
行儀が悪いとは思いながらも、全員で喋るにはこれが最適なので仕方がない。