魔法と思春期 skab (ページ40)

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October ページ40

季節はすっかり秋めいて、学校内のそこかしこにそれとなく、ジャックオランタンの飾り付けが増え始めた。

この学校は高地にあり、山々の折り重なる尾根がはっきりと見えるような場所にあるせいか、十月も中頃になると朝晩はぐっと冷えるようになる。
何となくタイミングを逃していた俺だったが、今朝は朝食のあとに少しだけ時間があったので、ついに夏用ローブから冬用ローブに衣替えをした。
見た目はさほど変わりはないが、ウールが織り込まれているそれはかなり暖かい。
あとひと月もしないうちに。この装いにマフラーやニット帽、手袋なんかが欠かせなくなる本格的な冬が来る。
こっちの秋はとても短いと聞くし、今は初めての秋を、それなりに楽しもうと思う。

そういえば、佐久間から挨拶されるようになって二週間くらい経っただろうか。
平穏な学校生活は日々続いているものの、唯一の、というほど大したことではないが、気がかりになっていることといえば、俺と佐久間との関係だった。
こちらが拒絶する形で、あの日からずっと距離を保っていたし、朝と夜、律儀に毎日、一方的に交わされる挨拶を、俺はまだ一度も返せないままでいた。

それとは別に、最近、同じスリザリン生のなかで、それなりに話せる後輩が出来た。
「めめ」こと、目黒蓮というスリザリンの三年生である。
彼もまた、この寮では少し変わった生徒だった。
甘い顔立ちで高身長、運動神経も抜群で見た目は誰が見たって完璧そのものなのに、勉強の類は一切が不得意で、だけどクィディッチは恐ろしいほどに強いから男女ともに大人気、という小学生みたいなスキルを持った奴だ。

めめには親友が二人いる。
そのどちらもこの学校に来てから出来た親友で、そのどちらも、正真正銘のマグル出身。
めめはもちろん純潔の魔法使いの血筋、かつスリザリンの寮生ということで、俺のように異端児扱いされていたんじゃないのかと聞けば、本人はまったくそんな事はなかったと言う。

そうなりかけた事はあったらしい。
だけどその華やかな見た目や、実直過ぎるめめの性格から「なんで自分の友人を他人に決められなきゃいけないんですか？」と当時のボス的な存在だった上級生相手に正面から論破し、結局事なきを得たらしい。

そんなこともあって、めめは佐久間や他のスリザリン生が俺にちょっかいを出していたのを
「いい歳してアホくさ」
と思いながら仲間に加わる事なく、遠巻きに見ていた数少ない生徒のうちの一人だったようだ。