魔法と思春期 skab (ページ4)

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本当なら、まだ各寮ごとに新入生へ向けた簡単なレクリエーションが行われている時間だ。
だけどさっきまでの俺を心配したふっかが、こうして声を掛けてくれたことが何よりもありがたい。

これでも最初のうちは「負けるもんか！」と心に決めて、出来るだけ気配を消しながら諸先輩方の説明を静かに聞いていたのだが、遅れてやって来た例の金髪の男が談話室の一番目立つ場所に置かれたソファに当たり前のように座ったところで気持ちが揺れ動いた。

あの人、この寮の中で権力ある人だったのか。

うげ、なんて思っていると視線がかち合い、気が付けば一歩後ずさっていた。
そのまま寮から抜け出すことは容易かった。
これはただの言い訳だけど、むしろ寮生も俺も、謎に出方を伺うようなこう着状態が続いていたから、結果的には出て来て正解だったと思う。

「ねぇふっかぁ」
「ん？」
「…俺何かした？」
「あ、それなんだけど、阿部ちゃん俺理由分かったわ」

え。
思いもしない言葉に驚いて顔をあげると、ふっかは唇を尖らせ、そこを親指と人差し指で触れていた。これは何か考えごとをしている時のふっかの癖だ。

「あのさ、マグルって知ってるよね？」
「魔法使い側が呼んでる『魔法が使えない普通の人間』のことでしょ」
正直あんまり良い意味じゃないよね、と俺が聞けばふっかはこくりと頷いた。

「阿部ちゃんがマグル出身だから、あんな態度を取ってるっぽい」

その言葉に首を傾げた。
「え、どういうこと？マグル出身ってこの学校に俺だけじゃないでしょ。ふっかだって俺と同じマグル出身じゃん」
「いや〜そうなんだけどさ」
困ったようにふっかが頭を掻く。
ああもう、じれったいな。

「そのね」
「なんだよ」
「その、阿部ちゃんが入った寮ってのが最大の問題だったのよ」
「……はあ？」

何が言いたいのか分からず思いっきり顔を顰めた俺に、ふっかは「ですよね」とため息を一つ吐いた。

「スリザリンって、超純血主義なんだって」

ん？

その言葉の意味を咀嚼するのに時間がかかる。
「超純血主義…」
目を二、三回ぱちぱちと動かし、俺は半笑いになって言葉をこぼした。
そんなまさか、と首を横に振った先でふっかも困惑している。それが妙に生々しいと言うか、現実を突きつけてくるようで。

「…え、じゃあなんで俺が入っちゃったの？」
「分かんない。少なくとも俺の寮の先輩に聞いたら前代未聞だって」

いやいやいやいや。

そんなの、俺のせいじゃないじゃん。