First match ページ23
「魔法界って期日や締切とかはガバガバだよねぇ」
放課後の図書館。
背丈の倍ほどの脚立に跨り、本棚の上の方を探っているふっかが、何かを思い出すようにしみじみと呟いた。
独り言だったのかもしれないが、割とはっきり聞き取れてしまった。
そうなると気になってしまい、脚立を支えるフリをして本を読んでいた俺は思わず上を向いた。
「なに、急に」
「フツー課題ってさ、出されたら次の授業までにーとか、遅くても一ヶ月以内には提出するもんだと思うじゃない。前の学校がそうだったし。なのに、それがさっき出しに行ったら『もうやってきたの?』だって」
「ああ、それね。それは俺も思った」
マグル出身の俺たちには、入学式の翌日から特別補習という形で定期的に課題が出されているのだ。
それぞれの学生の習得レベルに応じて段階的に用意され、必要であれば放課後に手の空いている先生の授業だって受けられる。
杖の出し方としまい方、箒の乗り方、魔法界用語みたいな初歩中の初歩から始まった補習も、一月経って習熟度は上場。
新しく何かを覚えることは嫌いではなかったし、俺もふっかも魔法について知りたいというモチベーションは高い。
授業ごとにこまめに課題が提出されるので、溜まらないように、こうして時間があれば図書室に集まることが多かった。
出来上がった課題はお互いに間違いがないか確認してすぐに提出する。
だけど普通にこなして出しているだけなのに、なぜか褒めちぎられるのだ。
どの教科も、どの先生も、記入済みの課題を持ち込めば例外なく感動してくれて、時には「スリザリン、ハッフルパフに5点ずつ」なんて寮に加点までしてくれる。
嬉しいけど、そこまでされると正直引く。
さっきもここへ来る前に二人して尋ねた天文学の部屋で、先生が感激のあまり、俺とふっかをお茶に誘ってくれた。
入学して一ヶ月くらい経ち、薄々勘付いてはいたけど、もしかしなくても、この学校の生徒の勉強に対する意欲はそんなに高くないっぽい。
俺たちにとっては好都合だけど。
「それにさ、一年後に返事をした俺をあっさり入学させるのも、普通だったら有り得なくない?俺としては阿部ちゃんと同学年で入学できて良かったけど」
言いながら、不安定な脚立の上でふっかが手を伸ばしている。
右足にしっかりと力を入れて立ち、左足が少しだけ浮いていた。
スラックス越しにでも分かる、しっかりと、まっすぐ綺麗に伸びた軸足をじっと見つめながら、
「確かに」
相槌を打つ。
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みな(プロフ) - はじめまして。面白いです。ホウキとか杖とかも出てくるんでしょうか?続き楽しみにしておきます。 (9月15日 6時) (レス) id: 2fd29c3102 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そらちね | 作成日時:2023年9月13日 14時