検索窓
今日:9 hit、昨日:68 hit、合計:61,749 hit

22 side_fk ページ22

色々なことを適宜乗り越えつつ、高三になってからは、自分なりに真面目に学校に通っている。

得意科目だった体育はほぼ見学するようになったし、膝下が出る服は避けるようになったけど、それ以外の日常生活で不便を感じることはまだない。
後遺症が残らなかったのも不幸中の幸いだった。

それに養成所を辞めてからは、今まで出来なかったことをたくさん経験できた。
放課後に友達と遊んだり、人生初のバイトをしてみたり。
毎日刺激的なことばかりで、これはこれで楽しかった。


気がつくと夏休み。
いつも通りの時間に起きてしまい、スマホのカレンダーを見てもう一度ベッドに体を沈める。
仕事や舞台のない夏休みなんて何年ぶりだろう。
部屋の天井をぼーっと見ながら、何しようかなぁ、彼女でも作ろうか、てか俺受験生じゃん、なんて頭の中で計画を立てていると、ノックもなしに勢いよく部屋のドアが開いた。


「おら起きろふっか!」


続いて聞こえてきた懐かしい声に驚き、俺は文字通り飛び起きる。


「えっ、阿部ちゃん?!」

驚く俺に構うことなく、阿部ちゃんは足音を立てながら部屋の中に入ってきた。
また身長伸びたなぁとか、少し日に焼けて黒くなったなぁとか思っていると、頬を両手でがっしりと掴まれて上を向かされる。
人当たりのいい笑顔に騙されがちだけど、阿部ちゃんの本来の目つきは三白眼で鋭い。
それがハッキリと見て取れるということは、つまり、めちゃくちゃ怒ってる。
今まで見たことがない阿部ちゃんの表情に、背筋に氷を落とされたような寒気がした。

「お前さぁ、マジで何やってんの?」

いや、治安悪いな。
久々に聞いた阿部ちゃんの「お前」呼びに口元が引き攣る。
突然現れた阿部ちゃんから逃げようにも、信じられないくらいの力で両頬を押さえつけられ、顔をそらすことさえできない。
俺いま絶対変な顔してる。

「あ、その、養成所の件は……」

何か言わなきゃ。
そう思い、四ヶ月前に送ったメールの内容を直接謝ろうとした。
だけど阿部ちゃんは、俺の言葉を押し除けると、とんでもないことを言ってきた。


「辞めたから」

「……は?」

「俺もさっき、養成所辞めてきた」
「え、阿部ちゃん何言ってんの?」

どういういこと?
アイドルになる夢は?

阿部ちゃんが俺から一旦手を離し、鞄の中を漁る。
混乱する俺の目の前に突き出してきたのは、見覚えのある白い封筒だった。


「一緒に魔法学校、行くよ」
「え」
「俺がふっかの足、速攻で治すから」

First match→←21 side_fk



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (87 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
206人がお気に入り
設定タグ:skab , iwfk , さくあべ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

みな(プロフ) - はじめまして。面白いです。ホウキとか杖とかも出てくるんでしょうか?続き楽しみにしておきます。 (9月15日 6時) (レス) id: 2fd29c3102 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:そらちね | 作成日時:2023年9月13日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。