魔法と思春期 skab (ページ3)

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理由が分からなければ対処のしようがない。
ここまで嫌悪感を大っぴらにしてくる相手に、いっそ潔いほどの苛立ちが湧いてきた。
ずかずかと歩み寄って金髪の在校生との距離を詰める。
俺の勢いに押されたように、金髪の男を取り囲んで座る生徒が怯んで、ベンチの隙間を僅かにあけた。

「ここ座っていいですか？」

だめだ、と誰かから言われる前にやや強引に金髪の男の横に体を滑り込ませる。
男は動かず、その横にいた生徒がぎょっとしたように俺から距離を取ったことで難なく座ることができた。
意外にも男が俺に何かを言ってくることはなかったが、その代わりに真横から頬に穴が開くほどの視線を感じる。
正直、ものすごく居心地が悪い。

「あの」

その視線を弾き返すように勢いをつけて横を向くと、少しだけ驚いたそぶりを見せた男が目を見開いた。
溢れそうなくらい大きな瞳には、余所行きの笑顔を貼り付けた俺が写っている。
俺も俺で一連の行動への不愉快さを隠すことなく滲ませているせいか、思ったより笑えていなかったけれども。
宣戦布告の意味を込めて、俺は小さく手を差し出した。

「はじめまして、阿部亮平です。どうぞよろしく」

案の定というか、じろりと思う存分睨まれただけで、その手を男が握り返してくれることはなかったけれども。

ーーーーー

「阿部ちゃん」

人気の少ない食堂前の廊下で待っていると、すぐにふっかがやって来た。
歩くたびに翻るふっかのローブの裏地は黄色。
ふっかこと、深澤辰哉はハッフルパフの寮に振り分けられ、唯一の友人同士である俺たちの願いも虚しく、残念ながら離れ離れになってしまった。
まだどの寮がどんな特徴を持っているのか、いまいち理解出来てはいないが、少なくとも俺と同じスリザリンではなかっただけ良かったと思う。
軽い挨拶を交わしたのちに、二人並んで食堂横の階段の隅に腰掛けた。

「阿部ちゃんの寮どうだった？」
「うーん…寮自体は悪くはないんだけど、それよりも俺に対する視線がキツい。新入生ですら俺を避けてる感じ。ふっかは？」
「なんか隠れ家みたいで意外と居心地良さげ。先輩たちもみんな優しそうだった」
「えー羨ましい。もうすでに転寮したい」
その制度があるのかすら知らないけれど。

頬を膨らませた俺は伸ばしていた足を折り、膝を抱え込んで分かりやすく項垂れた。
嫌でも目に入る深緑色の自分のローブに、ため息は大きくなるばかり。
一連の様子を真横で見ていたふっかが苦笑した。