魔法と思春期 skab (ページ18)

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想像を遥かに超えた突拍子も無い出来事が連続したせいで、しばらく動揺したままだった。
学校には遅刻したけど、レッスンは振り入れとかそういうのがあって他の人たちにも迷惑がかかるため時間厳守で向かう。
いつも通りの電車に乗り、いつも通りの道を通って養成所へ。
俺に遅れること５分ほど。
レッスン場に顔を出した阿部ちゃんは、いつも通り俺を見つけると笑顔で手を振って近寄ってくる。

制服から上下水色のジャージに着替え、床でストレッチを始めた阿部ちゃんの背中をぐいぐいと押してやった。
いてててて、ふっかギブ！ギブ！なんて毎度苦しむ阿部ちゃんの声をぼんやりと聞きながら、今朝のことはどうするべきなのかと考えをぐるぐると巡らせた。

「ふっか、今日いつも以上に変だよ」
「おい、いつも変みたいに言うなよ！」
「なんかあった？」
「…………なんもないよ」
「いやそれ、絶対なんかあるやつじゃん」

休憩時間。
レッスン場の隅っこに移動した俺たちは、スポーツドリンク片手に並んで座る。

自分的に今日のレッスンは本調子じゃ無いなと感じてたけれど、振り入れで大きなミスはしなかったし、いつも通り振る舞えていたから誰にもバレてないと思っていたのに、ちょっとしか変化でもすぐに気がついて声を掛けてくれる阿部ちゃんの優しさが、なんだか今日はいつも以上にグッときた。
阿部ちゃんになら、なんでも話したくなっちゃう。
というか、実際に今までなんでも話してきたし。

今朝の話は阿部ちゃんに伝えるべきなんだろうけど、でも果たしてどこまで信じてくれるか。
それに自分の中で気持ちが決まってないのに、結論を委ねてしまう怖さみたいなものもある。

「ふっかはどうしたいの？」

一緒に夢を追いかけてきた阿部ちゃんにそう聞かれることが、なんとなく怖いのだ。

大いに日和った結果。
俺は魔法学校へは入学せずに、これまでと変わらない生活を選んだ。
だって、今の生活に不満はないからね。
母ちゃんはちょっとだけ残念そうにしてたけど。

レッスン場で阿部ちゃんに心配された日。
本当のことを話す勇気が出なくて、あのあとめちゃくちゃ適当に話を作り上げて、どうにかその場を切り抜けた。
だから魔法学校から手紙が届いたことも、結果として入学を見送った事も、俺が魔法使いの血筋だって事も阿部ちゃんには言ってない。
冷静に考えたら、普通は言えるわけないよね。