魔法と思春期 skab (ページ14)

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阿部ちゃんは強い。

「嫌がらせは相変わらず？」
「もちろん。あいつら毎日毎日飽きもせず、よくやるよホント」

だから俺もしつこくならない程度にこまめに様子を伺ってはいるんだけど、阿部ちゃんは気遣いの達人だからか、俺を心配させまいといつもニコニコ笑うだけで内側を見せてくれようとはしない。

お節介だとは思う。
思うんけどさ、
そこは俺が「ふっか」だからって事で大目に見て欲しい。

俺が阿部ちゃんと出会ったのは小学生の頃。
「マグル」の世界で普通に暮らしていた俺たちは、当時アイドルの養成所に通っていたライバルであり仲間だった。
養成所はかなり有名なところだったから、入るだけでも大変だったのを覚えている。
数えきれないほどいた希望者は、次へ、また次へと審査が進むごとにどんどん少なくなっていく。
何が正解なのか分からないまま、俺は目の前の課題とか、言われたことを一生懸命こなしていくだけ。

結果として十人にも満たない合格者の中に、俺と、それから阿部ちゃんは残った。
阿部亮平を認識したのは、その時が初めてだったと思う。

年齢も学年も俺の方が一個上、だけど養成所では同期という扱いだったから、気が付いた時にはすでに今みたいなお互いに遠慮のない関係だった。
学校が終われば母ちゃんに連れられて養成所に通い、授業よりもはるかに難しい歌やダンスのレッスンを受ける。

当時はテレビに出れたら良いな、かっこよく踊れたら良いな、くらいの感覚だったから、明確に将来を見据えていたわけではない。
だけど学校とは別の場所で必死に何かに打ち込むことが、俺も阿部ちゃんも楽しかったんだと思う。
一年、二年と時間が経つごとに少しずつ減っていく同期の中で、俺と阿部ちゃんはお互いを励まし合いながら黙々とレッスンを受ける日々が続いた。

学年が上がれば徐々に仕事に呼ばれるようになって来た。
少しずつだけど、今までの経験が目に見えて結果になりはじめている。
舞台の隅っこで、スタジオの端っこで、誰にもバレないように二人でこっそりと拳を合わせて努力を称え合った。

「ふっか」「阿部ちゃん」
何かあればお互いの存在を確認するように名前を呼び合う。
俺の大切な友人で、大切な俺の同期。

「いつか一緒に有名になろうね」
なんて顔を合わせれば毎回のように話していたのに。

一年と少し前。
俺の部屋のベランダに、手紙を咥えたフクロウが突然現れたことで、俺と阿部ちゃんの人生は大きく変わる。