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「何この感情は…この胸のときめきは…」
胸を押さえたまま、うっとりと目を細める背中をふっかが軽く叩く。
裸眼のくせに眼鏡をクイっとあげるような仕草を見せると、説明口調で語り始めた。
「あれがグリフィンドールの宮舘涼太とスリザリンの渡辺翔太。
生まれた病院が一緒、家が近所、それから父親同士は同じ魔法省に勤めていて今でも家族ぐるみで付き合いがある、まさに絵に描いたような幼馴染み。
寮こそ違えど、寝る時以外は四六時中いつも一緒にいることが当たり前。
そんな二人の通っていた幼稚園のクラスの名前をとって通称『ゆり組』と呼ばれている」
「ゆり組…」
「阿部ちゃん好きそうだよね」
少女漫画みたいなテンプレ。
半笑いのふっかにそう指摘され、背中のあたりがむず痒くなった。
「そんなことないよ」
そう言い返したかったのだが、生まれて初めて目撃する本物の幼馴染の破壊力に、俺が冷静でいられるわけもなく。
息が詰まるような胸の苦しさに天を仰ぎ、両手で顔を覆うと、
「好きぃ。尊いぃ」
自分でも笑ってしまうくらい、だらしない声を出しながら身悶えた。
スリザリン生なんか絶対友達になれない、なるもんかと心に決めていたけど、この件に関しては目を瞑りたい。
というか自分の目が黒いうちは、この2人をこっそり見守りたい。
「はぁ…朝から良いもの見たわ」
「おいやめろ、本人たちの前で拝むな」
バレんだろ、と肘で小突かれ、それだけで口の端が持ち上がってしまう。
「ありがとうふっか、ありがとうゆり組」
「で、」
「ん?」
「……これからも一緒に学校楽しめそう?」
少し不安そうだけど落ち着いた、心地良いふっかの声が頬を撫でる。
そうだった。
俺は大切な友人に心配させてたんだった。
寄りかかっていた肩からそっと離れ、ちらりと横目でふっかを見てから、目の前の大皿に積み上がったカリカリベーコンを一つ摘んでそのまま口に放り込み咀嚼する。
「楽しむも何も、俺はハナから楽しいと思って過ごしてるから」
わざとらしい、キリッとした表情を見せながら親指を立てて笑えば、
「…やっぱ阿部ちゃんのメンタルエグいわ」
耳元のピアスを小さく揺らしながら、安堵したようにふっかは目を細めた。
入学して二週間。
ふっかは変わらず俺にとっての精神安定剤みたいなもの。
そして本日新たに「ゆり組」という尊い存在が、俺の学校生活に花を添えてくれることとなりましたとさ。
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みな(プロフ) - はじめまして。面白いです。ホウキとか杖とかも出てくるんでしょうか?続き楽しみにしておきます。 (9月15日 6時) (レス) id: 2fd29c3102 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そらちね | 作成日時:2023年9月13日 14時