魔法と思春期 skab (ページ11)

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「まーじーでハッフルパフしか勝たん」

少量のオートミールを完食し、今度は水分が飛びすぎてカラカラになった食パンに齧り付く。
隣でふっかが静かに笑った気配がした。

「阿部ちゃんすっかり有名人よ。学校中で噂になってるからね。マグルがスリザリンに入っちゃったって」
「全然嬉しくないんだよなぁ、それ」
ゴリゴリと頬の内側を突き刺してくる食パンをオレンジジュースで一気に押し流す。
横ではふっかがカリカリに焼かれたベーコンにフォークを突き刺していた。
好きだよねえ、それ。

「でもスリザリン以外で友達増えたでしょ」
「増えた増えた。特にマグル出身の人からすっごく声かけられる」

昨日だって油断していたら授業の直前に教科書を破られてしまい、直すよりも先に見ず知らずのグリフィンドール生が貸してくれたのだ。
その人は一つ上の先輩でマグル出身ではなかったけれど「帽子が決めたこととはいえ、君も大変だね」なんて俺の身を真っ先に案じてくれて。
そんな話をしていると食堂の扉が開き、生徒が入ってくる。
ちらりと見れば、まさに今話題になったグリフィンドールの先輩だった。

「あ、あの人だよ」
俺が言って、ふっかも目の前の食事から顔を上げた。

先輩はまだ早い時間だと言うのに身だしなみを完璧に整え、優雅にローブを翻しながら貴族のような立ち振る舞いで歩いている。
その姿はまさにランウェイを歩くモデルそのもの。
俺たちの視線に気がついたのか、先輩がこちらを向くと「ああ君か」なんて顔で手を振ってくれた。
にこりと笑って会釈しながら手を振りかえすと、先輩は満足そうに頷いてくれる。
ぽけっと惚けていると、ふっかが「あ」と思い出したように言った。

「あの人確か、舘様じゃね？」
「舘様？ふっかの知り合い？」
「いや知り合いってわけじゃないけど、阿部ちゃんとは違う意味で有名人だよ。グリフィンドールのクィディッチ選手で、ポジションは確かビーターだった気がする」
「ビーター？あんなに優雅なのに？」
彼なら花形のシーカーですと言われても百人中百人が信じるだろう。
そんな気品あふれる高貴な佇まいの先輩が、ビーターのポジションだなんてにわかには信じ難い。

「でもそっか、クィディッチの選手だったら有名だよね」
「あーうん。それもあるんだけど、有名なのには別の理由もあんだわ」
「別の理由？」
首をこてんと傾げたタイミングで、やや荒々しく食堂のドアが開いた。

「涼太！先行くなって言ったじゃん」