魔法と思春期 skab (ページ2)

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数段の段差をゆっくりと降りた俺は、足の裏からじわじわと上ってくる謎の緊張感を誤魔化すようにゴクリと小さく唾を飲み込むと、一番右端のテーブル、好奇の目が待ち受ける列に近づいた。
壇上ではもうすでに次の新入生の名前が呼ばれ、俺と、スリザリン生以外の生徒はそちらに注目している。
本来だったら振り分けられたばかりの新入生が迷う間も無く、在校生が「こっちに座れよ」と好意的に手招いてテーブルに呼びつけてくれるのだ。少なくとも、俺の前までの流れではどこの寮だってそうだった。
だけど俺がどんなに近づいたところで、食堂の入り口まで伸びている列のどこからもそんな声ひとつ上がらない。大勢の生徒の視線は痛いほど感じるのに、だ。

俺が何をしたんだ。

さすがに式が終わるまで一人で立ち尽くすわけにはいかないし、そもそも今日は入学初日。果てしなく長い学校生活の最初が、こんな不穏な気配から始まるなんてとてもじゃないけど耐えられない。
理由が分からなければ、誰でも良い、とにかく直接聞けば良い。
腹を括り、素早く彷徨わせた視界の端に、稲穂のような綺麗な金色の髪が目に入った。
相手も同じようにこちらを見ている。
血管が透けて見えるんじゃないかというほどの白い肌と、少女のような幼い顔立ちをしているけど、たぶん男。
視線が絡まると俺の反応よりも先に、相手の猫のように大きな瞳が訝しげに細まった。
もちろんお互い面識はないが、その一瞬だけでも俺に良い印象を抱いていないことなんて理解できたし、それどころか露骨に「ありえねえ」と顔に似つかわしくない低い声でそう言って顔を歪ませてきたのだ。
あからさまな態度に、腹の奥の方で何かが湧いた。

「ありえねえ」なんて、それはこっちのセリフだ。

「あの、」
「グリフィンドール！」

決心を固めて声を上げた瞬間、背中を勢いよく押すように帽子の声が重なり思わず振り返る。
追いかけるように食堂の空気が揺れた。
俺の時とは違い、それまでと同じように歓声に揺れ動く食堂の様子に唖然とする。呼ばれた生徒は頬を紅潮させながら椅子から飛び降りると、こちらとは反対側の端にあるテーブルの生徒たちに手厚い歓迎を受けながら列に加わっていく。

なんだそれ

呆れ返って前を向き直せば、まるで異質なものを見るように金色の髪の在校生が俺に睨みをきかせている。

もう一度思う。

なんだそれ