魔法と思春期 skab (ページ1)

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The ceremony ページ1

「スリザリン！」

その言葉の意味を理解するよりも先に、目の前で固唾を飲んで見守っていた生徒たちの呆けたような、驚いたような表情が目に入った。

教会と見間違えるほどに荘厳な食堂に並べられた、四つの長い長いテーブル。そこには赤、黄、深緑、青と裏地が色分けされたローブを纏った在校生たちが寮ごとに座っている。
新入生は1人ずつ名前を呼ばれ壇上に上がると椅子に座り、古ぼけた、いかにもそれらしい帽子を被った。
緊張感に包まれるなか、帽子の口から四つの寮のどこかの名前が高らかに告げられれば、割れんばかりの歓声があがる。

ついさっきまで、俺の順番が来るまでは。

風が凪ぐように、どこからも、誰からも歓声一つさえ上がらない。
それどころか、食堂全体の空気が変わった気がする。
もちろん悪い意味で。
一瞬の間があいて、徐々に聞こえてくるのは歓声とは程遠いどよめき。
特にそれが顕著だったのは、多分、組み分け帽子が名を告げたスリザリンの寮の列だ。
裏地が深緑色のローブを纏った学生たちが、帽子を被ったまま壇上で固まる俺を横目でチラチラと見ながら、隣もしくは正面の生徒と顔を見合わせている。
学生たちがざわめくことで揺れる深緑色のローブはまるで森の木々みたいだ。
なんて、ぼんやりとそんなことを考えながらも俺の頭の中は混乱しているし、割としっかりと動揺している。

いかんせん見たくなくても目に入ってくる学生たちの様子と表情は、入学式の舞い上がった気持ちから一転、自分がどう見ても歓迎されていないことを悟らせるには十分すぎた。

「では、言われた寮のテーブルへ」

先生に促されれば椅子から立ち上がるしかない。
すっかり重たくなった腰を持ち上げて椅子から降りる。
行きたくなくても、今からあのテーブルに座らなければいけないのだと思うと気が滅入りそうだった。
スリザリン生全員からの好奇な視線が、蛇のように体を這いずり回っているような感じがした。まさにモチーフ通りだ。

数歩進んだところで組み分けを待つ新入生の列に並んでいたふっかと目が合う。
ふっかもおそらく俺の身に何が起こっているのか理解できていないようで、だけどこの場の奇妙な雰囲気だけは敏感に察しているらしい。

阿部ちゃん、大丈夫？

心配そうな顔で口元がそう動いたふっかに、

わかんない

俺は正直にそう答え、力無く首を横に振ることしか出来なかった。