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なんとなく、入って行きにくくて立ち尽くしてたら
ふっかが出てくる気配、咄嗟に物陰に隠れた
朝比奈さんは出てくる気配なくて、もう一度
非常口の扉をあけた
非常階段の手摺りにもたれて月夜を見てる彼女の
後ろ姿は儚くみえて、消えてしまいそうで思わず
後ろから抱きしめた
抱きしめた彼女から微かにふっかの香水の香りがした
のは気づかないふりをして
「酔いさめましたか？」
「岩本くん…ありがとう、もう平気よ」
後ろから抱きしめた腕をかかえて肩を震わせてる
俺は朝比奈さんのこんな弱々しい姿は見た事なくて
そうだよな、どんなに仕事できたって、悲しい時は
あるし、泣きたい夜だってあるよな
そんな当たり前の事を静かに泣く彼女を抱きしめながら
感じてた
「岩本くん、一つお願い聞いてくれる？」
「俺でできることなら」
「ちょっと、酔いが覚めそうにないから、私の荷物
持ってきてくれない？」
「お安いご用ってか、ここに」って足元を指すと
俺と朝比奈さんのカバン
「気がきくわね」
「持ってきて正解でしたね」
「ありがとう」
彼女を抱きしめていた腕を解くと、彼女はカバンを
取って出口へ歩き出した
ふっかとどう言う関係？何度もこの質問が口を
ついて出そうになるのをグッと我慢して
タクシーの捕まる大通りまで並んで歩く
タクシーを捕まえると
「岩本くん、奥入って」そう言うから奥に移動すると
俺に一万円札を握らせるとタクシーを出すように
指示をした
流石にもらう訳にいかないし、断ろうとしたけど
扉も閉まって車も動き出した
翌朝出社したら朝比奈さんは有給消化だと部長が
教えてくれた
三日後出社した朝比奈さんは髪をバッサリ切っていた
社内でヒールを履いてるのも初めてみた
いつもは優しいシルエットの装い、ゆるく髪も巻いて
フェミニンな雰囲気だった彼女が
180度かわって、ショートボブのかっちりした
パンツスタイル、すらりとした彼女によく似合ってる
けど、あまりの変身振りに周りは戸惑う
ふっかは「Aめっちゃ、かっこいいじゃん
さっすがだねぇ」って笑った
朝比奈さんも「ありがとう」そう言った彼女の瞳の奥に
哀しみがみえた
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作者名：おさと
| 作成日時：2022年10月27日 14時
